超天才巨乳美少女魔法使いのフィアーナです(ドヤ)

「「「「「「「地球人!?」」」」」」」


 老人たちがハモった。

 しかし、驚きを超えて理解不能なのは春賀も同じ。


「え? てんさ……え?」

「超天才巨乳美少女魔法使いのフィアーナです」


 にっこり笑顔で言いきった。

 聞き間違いだと思ったが、ガチらしい。


 天才かどうかは知らないが、フィアーナは堂々と自称するだけあって十分美少女と呼べる容姿ではある。紅いポニーテールも艶やかで、にっこりスマイルの似合う整った顔立ちは穏やかながら、その奥に芯の強さのようなものを感じる。だが………


「天才で……巨乳……」


 春賀は不躾にも彼女の胸元へと視線をやった。

 すとんとまっすぐに落ちた。

 つまり、そういうことだった。


「なにか?」


 ごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごご………


「ひぃっ!」


 能面の笑顔で黙らされた。


「きっと今の状態に混乱していることでしょう。ええ、そうでしょうとも」


 笑顔の質をコロッと変えたフィアーナは腕を組んでうんうん頷く。

 テンション高く拳を上げた。


「異世界召喚!」


 ばばーん! 


 まるで商店街の福引で温泉旅行が当たったかのようなノリだった。


「おや? 地球世界の方はこの一言で大方納得し、喜んでくれるという話でしたが?」


 どうにも偏見があるらしい。


「……なるほど」


 とりあえずそれで納得することにした。

 深く考えるのを放棄したともいえる。


「あなたをこの世界に召喚したのは他でもありません。現在、このレイブルノウ王国が直面している危機に対抗するために、どうしても救世主様の力が必要なのです」

「はあ……」


 早口気味に説明されても、春賀はそう答えるしかない。


「……でも、そうか。僕はやっぱり……」

「どうしました?」

「ううん、なにも」


 春賀は、にへらと笑う。


「そ、それで……フィアーナ、さん?」

「超天才超巨乳美少女魔法使いのフィアーナです」

「なんでわざわざ訂正するの!? そんなにこだわるとこなのそこ!?」

「文句あんのかああん?(キラキラ)」

「ひぃ! 笑顔と口調がかみ合ってないよぅ!」


 春賀はフィアーナのメンチスマイルにガクガクのブールブル。おもらししそうになりながら、二度とそこに触れないことを心に誓った。


「その……魔法使いって、本当なんですか?」


 なんとも呑気な質問ではあるが、ゲームや漫画で登場するようなファンタジーへの憧れを捨て去るには春賀はまだまだ少年だった。


「もちろんです! 私は炎の魔法使い。魔法の力で奇跡を起こし、この世界に灼熱の軌跡を焼き付ける神秘の流星。煮て良し焼いて良しの天才巨乳美少女魔法使い、フィアーナさんとは私のことでーす!」


 ノリノリで言った。


「おおーすごいすごい!(ぱちぱち)」

「ありがとうございます」


 フィアーナは得意げに一礼。

 そんな彼女を老人たちは指さして笑っていた。

 ある者はひっくり返り、腹を抱えて爆笑までしている。


「この人たちは魔法が使えないので私に嫉妬してるんです」


 そうは見えなかった。


(ま、いっか)


 そんなことより。


「僕、フィアーナさんの魔法見たいです!」


 春賀の興味はそこから揺るがなかった。

 なんとも化け物染みたメンタルである。


「ふふ、構いませんよ」


 フィアーナは花のように微笑むと、上機嫌に集会所から出て行った。


「あ、まってよぅ~」


 もぞもぞ……。


「これ解いて欲しいんだけど……」


 春賀は縛られたまま土間を転がったままだった。

 しばらく放置された。




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