「早乙女萌のその後、中編」


私のレコーディングの番になった。


「よ、よろしくお願いします。」


「とりあえずギターから録ろうか!」


緊張して手が少し震える。


もえ!!!!!大丈夫だぞ!!」


こんな時はお兄ちゃんの応援が勇気になる。


「ありがとう。お兄ちゃん。」


「じゃあ早速録ってみようか!時間はまだまだあるからね〜」


「はい!」


そうして何テイクも重ねながら録り進め行った。


「唯ちゃん、ギターも上手いね〜どっかのお兄ちゃんの初レックより全然上手いよ〜」


「ちょっと〜ヨコさんやめてくださいよ!」


「確かに言えてるわ!こいつ初めての時半泣きだったもんな〜」


「お前ら適当言うな〜」


和ませてくれるこの空気、初めてお兄ちゃんのライブを見に行った時もライブハウスが怖かったけどメンバーとかお兄ちゃんがこんな風に楽しい思い出にさせてくれた。


「じゃあラストいってみよ!」


「はい!」


.


.


.


「はい。おっけ〜!じゃあちょっと休憩して唄録ろう!」


「分かりました。」


なんとかギターを録り終えた。


「お疲れ様、萌。」


「ありがとう、桃花ももかちゃん!」


「やっと私のハチミツの出番だね!」


「ありがたく使わせてもらうね!」


いつの間にか仲良くなってた桃花ちゃん、いつの間にか友達が増えた学校、いつの間にか好きになってたあの人、いつの間にか、いつの間にか私の人生が豊かになっていった。





悔しいけど、ありがとう。

優希ゆうき、私もう前向くから。


横山よこやまさん!唄の方もよろしくお願いします!」


「うん!じゃあバチっと決めようか!」


「はい!!」



______________


ダイスキ


作詞:早乙女萌

作曲: 早乙女萌

編曲:humanoid sound system


君との距離はもう、どれくらい離れたって感じてしまった

私は時が止まったままもう一人じゃ居られないの


答えて、答えて、あなたの全部

教えて、教えて、本当の意味を

出口のない迷路みたいな人生は

味のしないガムみたいな日々は

あなたが変えてくれたはずなのに

嫌になっていく


壊れた世界で私は1人

涙を流す事もなくて

ただ会いたい気持ちが溢れてるのに

何故、あなたは来ないの。


.


.


.


「最高だよ!!萌ちゃん!!1発録りで良いぐらい良かったよ!」


「ありがとうございます。」


「萌ちゃん!私感動した!」


「流石、可愛い可愛い妹だ‥」


そうして何度か録り直しましたが1番最初のテイクを使うことにした。


「じゃあとりあえずレコーディングが終わりだから、ミックス、マスタリングしてその音源をまた後日ここで聴いて最後に色々調整しようか!」


「分かりました!その、ありがとうございました、本当に。」


「こちらこそありがとう、絶対に良い作品にしよう!」


「はい!」


.



.



.


そしてオーディション前に無事CDが完成した。


「出来た!!私の初めてのCD!!」


「おめでとう萌ちゃん!」


「こういうのって、嬉しいよな、萌‥」


「これ、2人にあげる。」


「ありがとう!桃花ちゃん!家宝にするね!」


「ありがとう〜流石は可愛い可愛い妹だ!!!」


「もう〜2人とも〜大袈裟なんだから〜」


桃花ちゃんとお兄ちゃんと私で完成した音源をチェックしたり色々やってもらったお礼だ。


「とりあえず、来週からサブスクにも配信するし準備万端だね!!」


「うん、あとはオーデション。」


「まあ萌なら大丈夫だろ!とりあえず、今日はお疲れ様ってことでお兄ちゃんが飯奢ってやる!桃花さんも来る?」


「え!良いんですか!是非!」


「ありがとう!お兄ちゃん!」


「おうよ!」


こうして私達はお兄ちゃんの行きつけのカフェに向かうことにした。


.


.


.


「2人とも着いたぞ〜」


そうして着いたのはライブ喫茶”ロイヤル”という所だった。


「いらっしゃいませ〜って、ひかる君じゃないか!」


「店長〜お久しぶりっす!妹と妹の友達連れてきました!」


「あの、妹の早乙女萌さおとめもえです。」


「こんにちは!有栖桃花ありすももかです!!」


「いらっしゃいませ〜店長の浅井あさいだよ、よろしくね!」


「はい!」


「とりあえず好きな所触っちゃって良いからね〜」


どうやらここはお兄ちゃんの行きつけだ。

夜にやるとライブバー的なノリになって弾き語りなどのイベントもやっているらしい。


「光君、今日はどうしたんだい?」


「いや〜それがさ!俺の可愛い可愛い妹も音楽やっててさ〜ついに音源作った訳よ!萌、CD持ってきた?」


「うん。」


「これ、店長聞いてよ、マジでぶっ飛ぶから。」


「え!妹さんも音楽やってるんだ〜」


「はい、お兄ちゃんに憧れてずっと音楽やってました。」


「いや〜本当に可愛い妹さんだね!お〜い、さやっち!このCD流してくれる〜?」


「了解です!って光じゃん!久しぶり!」


「おう!さや、それ妹の初めての音源だから流してくれや!」


「え!光のよく話してた妹?どんな曲だろ〜楽しみ!」


「あの、お願いします!」


そうして曲を流してもらう事になった。


「♪〜君との距離はもう、どれくらい離れたって感じてしまった〜」


.


.


.


「どうよ、店長、彩?」


「‥。」


「店長?」


「天才だ。」


「え?」


「天才だよ!!!なにこの歌声!?!?

未完成の様で完成された声にシンプルなコード進行なのにふわふわと浮遊した様な歌メロ、本当にオリジナル?!?!!?」


「はい、本当に大事な曲です。」


「光のバンドより全然かっこいいじゃん?」


「うるせぇ!でも確かにほんとに妹とか抜きにめちゃくちゃかっこいいんだよな‥」


こんなに誰かに褒められたのは初めてだった。

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