「有栖桃花のその後、後編」
「
「誰?お前?」
その時はなんだこいつ2度と話しかけるかって思ってた。
「私、
「そう、まあよろしく。」
NOWHEREにもモデルのランクみたいなものがあって入りたての私に比べて和也は表紙になる程の実力者だった。
「おい、有栖。」
「なに?」
「今度撮影見に来いよ。」
「え!いいの?」
「同じ学校の奴がいつまでも雑誌の片隅に載ってるだけとか無理だし。」
「フフッ」
「なんだよ?」
「七海君って思ってたより優しいね。」
「俺は女が苦手なだけだよ。」
和也は努力家だ。
仕事が始まればイケメンが更にイケメンになり和也にしか似合わないような服から、みんなが真似したい様なスタイルまでなんでも着こなせるのが素直にかっこいいと思った。
「おはよー有栖ちゃん!!」
「ど、どうも、小林さん。」
「小林じゃなくて!ウイさん!でしょ!」
「あ!すいません‥」
「冗談よ、今日はどうしたの?」
「いや、七海君が勉強がてら見に来いって。」
「あら!珍しいわね、和也が女の人と話してるなんてほぼ見た事ないのに!」
「おい、有栖。」
「なに?」
「お前も撮影参加しろよ。」
「え!いいの?」
「ウイさん、メイクお願いしても良いですか?」
「もちろん!」
この日無理矢理参加した和也の撮影のお陰で私は一躍有名になった。
__ NOWHERE超新星現る。
__有栖桃花、爆誕。
「わー!!私表紙だよ!和也!!」
「良かったな。」
「ありがとね、和也。」
「おう。」
こうやって私達は仲良くなった。
その後も私がなんでモデルになったとかそういうのを色々聞いてもらった。
もちろん、優君の事もだ。
.
.
.
「じゃあ私こっち方面だから!」
「わかった!
「うん!和也君?ちゃんと桃花を家まで送ってあげるんだぞ〜」
「分かってますよ。」
和也は前より笑顔が増えた。
何故かは分からない。
でも、今の和也の方が好きだ。
「今日の撮影良かったらしいじゃん。」
「そうなのよ〜ついに私の才能が開花したのかもね!」
「そうかもな。」
「え!ちょっと〜否定しないと私が調子乗ってるみたいじゃない!」
「いや、俺は初めて会った時から桃花に才能あると思ってたよ。」
「え‥」
「俺って女が苦手なんだよね、昔から子役とかやってたんだけどこの頃から俺に寄ってくる女は俺と一緒にいる事の価値だけ欲しかったんだよね、あとは顔が良いとかモデルだからとか金持ってそうとかそういう理由でよ。
だから話しかけてくる奴みんな嫌いになったんだ。
高校入ってもみんな俺ってより”モデルの七海和也”に話しかけてる感じでさ。
でも、桃花は違かったよ。
俺のことよく知らないけど同じNOWHEREだから一緒に頑張りたいって気持ちが見えた。
だから俺はそんな桃花に頑張って欲しいと思ったんだ。」
あまりにも突然の素直さに思わず母性本能をぶん殴られた。
「だから今の桃花はたまたまでも偶然でもまぐれでもなくて実力でここまで来たんだよ。
そんな桃花のこと俺好きだよ。
だから、才能あるよ。だから頑張ってくれ。」
そう言って和也は帰って行った。
いつもはウザいぐらい家まで着いてきてくれるのに。
.
.
.
次の日衝撃の事実を知る事となる。
__ NOWHEREのカリスマ”七海和也”引退。
いつも一緒に頑張ろうって言ってくれた和也の頑張れってどこか他人事の意味を知った。
急いで学校に向かったがそこには和也の姿は無かった。
「桃花ちゃん!桃花ちゃん!和也君の事‥」
「私も分かんない‥」
電話をしてもFINEをしても返信がない。
「ごめん。私、早退って事にしといてくれない?」
「え!」
どうしよう、とりあえず‥
プルプル‥
「もしもし?ウイさん??」
「あら、桃花ちゃんから電話してくるなんて珍しいじゃない?」
「あの、和也の事‥」
「え!!あの子、桃花に何も言ってないだぁ〜????」
「和也の事なんか知ってますか?」
「和也君ね、海外に行くって。」
「え‥」
頭の中が真っ白になった。
心のどこかで、いつまでも和也は隣に居てくれて、大学生にもなってもなんだかんだで2人でモデル続けて大人になってあの頃は〜なんて笑えると思ってたのに。
私の友情は唐突に終わりを告げた。
今思えばおかしな話だった。
私の話をずっとそばで聞いてくれてた。
今思えばバカな話だった。
私のダメダメな時も支えてくれてるのにそれを当たり前と思ってた。
今思えば幸せな話だった。
私もモデルをやってる時ずっとずっと第一線で活躍して私にあり方を教えてくれてた。
今思えば嘘みたいな話だった。
和也だって色々思う事あるはずなのに気にしないふりしてた。
見て見ぬふりをして逃げてたのは私だ。
今思えば‥‥
いや、もう後悔はしない。
もう、逃げたりしない。
「ウイさんありがとう!」
「まあ、言わないなんて和也君らしいわね。
彼ね、10時30分発の飛行機よ。」
「分かった。私‥頑張るよ。」
走れ私、走れ私。
ここで諦めたら全部、全部ずっとこれからも後悔し続けるだけだ。
和也君に言わなきゃいけない事沢山あるのにダメだ。
ここで私もう!諦めるわけにはいかないんだ!!
.
.
.
空港にて‥
「和也ー!!!!!!!」
どこに居るんだろう‥
「和也ー!!!!!!!」
「なんで、いんだよ。」
居た、和也だ。
「じゃあ!なんで、居なくなるんだよ!!!!」
「悪い。」
「悪いとか悪くないとかじゃなくて、なんで居なくなるの‥」
「俺、海外に行って勉強して役者になりたいんだ。」
「だったら、言ってくれても‥」
「言えるわけないだろ。本当は今のままでも良いって思ってたんだけどさ、ダメなんだそれじゃ。俺本気で桃花の事好きで仕方ないんだ。
でも、それを伝えたら全部終わる気がした。
だから1から頑張りたくて海外に行く事にした。」
「今までごめん。」
「え?」
「私、和也の気持ち気付いてたし、それでも私は優君の事ばっか考えて勝手に和也の気持ちに蓋してた、でも気付いたの。
どんな時も一緒に居てくれてどんな話も聞いてくれて一緒に笑って一緒に強くなれるのって和也しか居ないって。だから私も好き。友達としてじゃなくて本当に好きだよ。
でも、もう遅いよね。」
泣くな私、自分から逃げといてズルい女だ‥
ギュッ!!!
「え?!」
和也に思い切り抱きしめられた。
「遅くなんかない。ずっとずっと頑張ってる桃花が大好きだから俺も頑張ろうって思えたんだよ。まさか好きって言葉聞けると思わなかった。ありがとう。でも海外には行くよ、俺は挑戦してくる。」
「私も頑張る。絶対に凄いモデルになって見せるから。」
「約束だな。」
そうして和也は海外へと飛び立った。
別に好きだからと言って付き合う訳でもなく、そのままお別れをした。
でもなんだかスッキリした。
結局私は自分の事だけ考えて生きてたんだと思った。
自分から愛そうとせず誰にも愛されないと嘆いていたんだと思った。
「伝えれて良かった。」
ー後日ー
「今月のNOWHERE見た!?」
「和也君は結局海外に武者修行だってね〜」
「それもだけど表紙の桃花ちゃんヤバくない!!過去一可愛いんだけど!!」
「本当にやばいよね語彙力皆無になる〜」
渾身の撮影によって完成したNOWHEREは5周年という事もあり過去一番の発行部数を達成した。
プルプル‥
「もしもし、桃花?」
「あら、和也君久しぶり。」
「NOWHERE今月凄かったんだってな。」
「まだまだこれからよ。」
「俺も頑張るよ。ありがとな桃花。」
「私こそありがとう!」
そう有栖桃花はこんな所で終わる女じゃない。
誰よりも上を目指して。
約束を果たすために。
ー終わりー
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