有栖桃花のその後

「有栖桃花のその後、前編」


終わりを告げた恋‥

誰か止まった時計の針を動かして‥


私、有栖桃花ありすももかが、ずっと好きだった新川優希しんかわゆうきとお別れをした後の話。


私の恋は唐突に終わりを告げた。


今思えばおかしな話だった。


私の事を見て欲しいがために小学生に戻った。


今思えばバカな話だった。


私の為に好きな人と距離を置いてまで頑張ってくれた人がいた。


今思えば幸せな話だった。


小中ずっと両想いで君のことばかり考えてた。


今思えば嘘みたいな話だった。


また私を見て欲しくて読モなんか始めちゃった。








今思えば‥‥








「おはよー桃花ちゃん!」


「おはよーれい!」


「今日は和也かずや君は??」


「別にいつも一緒って訳じゃないぞ〜」


「そうかな〜」


今日は雑誌「NOWHERE」の撮影の日だ。


優くんに振られて以降私は昔より仕事に専念するようになった。


同じ高校生モデル怜ちゃんとは二大JKモデルとしてよく特集される。

彼女は私とはタイプが違い黒髪短髪と女の子から見てもかっこいいのだが、意外と乙女な一面もあるとこが彼女の人気だろう。


「はい、じゃあ今日の流れ説明するから集まって〜」


「はーい!」


「おはようございます。今日は「NOWHERE」5周年企画の撮影です。

桃花ちゃんも怜ちゃんの可愛い系とかっこいい系の撮影プラス、Y2Kのミックスコーデとかも撮るから結構忙しいけどよろしく!」


「よろしくお願いします!」


撮影監督とカメラマンは私がこの世界に入ってからずっとお世話になっている人たちだ。


「桃花ちゃん❤︎今日もよ、ろ、し、く〜」


そしてテンション高めのオネェはウイさんだ。

メイク担当で話によるとオーディションで落ちそうになった私を最後まで絶対来るとプッシュしてくれたのがウイさんらしい‥


「ウイさんよろしくお願いします!」


「あんた最近、失恋した?」


「え?」


いきなりの事で返事に困った。


「いやね、女のカンってやつ???」


性別ネタは反応に困る‥


「なんで分かったんですか?」


「顔に書いてあるわよ!!

でもね、悲しさもあるけど強さとかスッキリしたんじゃない?」


そう言われると少し気持ちが軽くなった。


「ありがとう‥ございます。

実は小学生の時からずっと好きだった人とサヨナラをして‥」


「そう‥でもそれも運命なのよ。」


「え?」


「出会いも別れも全部が全部運命だと思わない?

いい事だけは運命とかって言葉使いたがるけどさ、私に言わせれば”良い事はまぐれ、悪い事は運命”なのよ。

でもね、良い事ってのは沢山あるもんよ?

もっと沢山の世界見なさいよ?」


「あ、ありがとう‥」


「ちょちょ!!ちょっと〜泣かないでよ〜

これからメイクの時間なんだから〜」


.


.


.


小学生の頃、親の都合で転校した。

もう2度と優君には会えないと思った。


中学になってから奇跡の再会を果たしたのに、相手は覚えてる感じじゃなさそう。


でも、やっぱり好きだ。

優君、好き。


違うの!優君!私はバカにしたくて友達に話した訳じゃないの!

ねぇ、優君!!居なくならないで‥

私の話も聞いて‥


声をかける勇気がなかった。


私の事なんて誰も見てないんだ。

両親も友達も優君もみんなみんな‥

見返してやる‥モデルになって!誰よりも有名になって!!!


.


.


.


「桃花ちゃん?大丈夫?」


「はい。いってきます!」


「良い顔になったじゃない、今の彼女はもう”無敵”ね‥」


あまり思い出せないがあの日の撮影の私は誰が見ても納得する可愛さだったらしい‥


昔は別に顔なんてなんでも良かったし、どんな自分でも良いから好きな人に好きって言われたかった。


でも今は好きな人に可愛いって言われたい。


集中してるとあっという間に撮影が終わった。


「じゃあ今日の撮影は終了!!

桃花ちゃんも怜ちゃんもありがとう!」


「桃花ちゃん?」


「へ?」


「撮影終わったよ?」


「あ、あ!!ごめん」


「完全にゾーン入ってたね?」


「いやなんか色々な私を証明したくて‥」


「今日の桃花ちゃんマジで凄かった。

なんて言えば良いんだろ‥

とにかく完全に私負けたわ!!」


いつもより雑だった様な‥

いや、すっごくリラックスしてたのか!


「桃花ちゃんお疲れさま!」


「ウイさんのおかげで私!」


「今日のあなた最高だったわ、過去一よ。」


「本当ですか??」


「もしかしたら今日以上はなかなか出さないかもしれないけどそんな時は今日の気迫がありながらも可愛くリラックスした自分を思い出してね?」


「はい!」


そうして現場は解散になった。


「お疲れ。」


「え!和也!?」


「ほら〜やっぱいつも一緒じゃない?」


現場に和也が来ていた。

和也は私の唯一の男友達だ。

少し口は悪いけど本当は優しくて誰よりも私の事を‥私の事を?


「怜さんもお疲れ様。」


「和也君相変わらずかっこいいねぇ〜」


「ちょっと、やめてくださいよ!」


最近思ったのは口が悪いってよりも女の人と話すのが少し苦手なのかもしれない‥


.


.


.



和也と会ったのは高校に入ってからだ。

最初はクラスが同じな事を知ってたがまさか同じ雑誌のモデルとは知らなかった。




ー続くー

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