「小山田栞菜のその後、後編」

今日は約束の日。

沙織さおりちゃんの家、鈴木最中すずきもなかのお手伝いをする日なのだ。


「お邪魔します〜」


「お、栞菜かんなちゃん!久しぶり!」


「今日はお手伝いよろしくね。」


「はい!頑張ります〜」


「よろしくね、栞菜。」


「うん!」


家族とは何度も会っており自分の娘のように優しくしてる。

そんな鈴木家が大好きだ。


「とりあえず食べなよ。」


そして何よりも


「お、美味しい〜」


ここの最中が大好きだ。

ただ甘いだけじゃなく上品でそして、香ばしいこの皮の匂いが大好きなのだ。


「栞菜ちゃん、いつも手伝ってもらっちゃって悪いね〜」


「全然良いんですよ!こんなに美味しい最中までご馳走して貰っちゃってるんですから!」


「本当沙織のやつ、昔から人付き合いが苦手でよ、仲良くしてもらえてて良かったよ!」


「沙織ちゃんはドジな私をいつも助けてくれてますよ!」


私と沙織ちゃんは先輩達が無理矢理部活にしなかったら多分話すこともなかったと思う。


.


.


.


___高一の春



「おーい!さえちん!!」


「どうした、あすか」


この2人が先輩の元茶道同好会の紗栄子さえこ先輩と元お菓子研究同好会の飛鳥あすか先輩である。


「さえちんの所にも1人だけ入ったんでしょ?後輩?」


「あぁ、そうともこの可愛い可愛い鈴木沙織すずきさおりちゃんがな!」


「ど、どうも‥」


「それがさぁ〜私のおか研にも1人入ってさ。」


「こ、こんにちは!小山田おやまだ栞菜かんなです。」


「だからさ、これを機に私達4人になって、お菓子研究茶道部にならない?その方が部費も出るしさ!」


「あすかにしては珍しく良い事を言うじゃないか。」


これが私達2人の初めての出会いだった。


「あの、鈴木さんだよね?私、小山田栞菜よろしくね?」


「うん。よろしく栞菜‥」


いきなり名前で呼んでくるなんて大胆な子だなとか初めは思ってた。


でも、2人とも気が合うんだと思う。

あっという間に距離は縮まっていった。


「ねぇねぇ〜!沙織ちゃん〜!」


「どうしたの?栞菜?」


「この前さ、駅前で美味しいパンケーキ屋さん見つけてさ〜!」


「そう。今度行ってみる?」


「え!いいの〜?」


時には他愛もない会話をしたし、


「栞菜は新川しんかわ君の事本当に好きなんだね。」


「え?な、な、なんの事かな〜」


「きっと新川君以外は気づいてると思うよ?」


「実はさ‥」


なんて私の相談にも沢山乗ってくれた。

喧嘩はした事ないしお互いがお互いの事を好きだからこそ程よい距離感でいるんだと思う。


.


.


.


「私さ、昔から本当に人付き合いとか距離感が独特だから栞菜以外に友達できた事無くて。

でも栞菜の事本当に好きだよ。」


「照れるな〜」


たまに独占欲みたいなのが見え隠れするけどそんな所も沙織ちゃんの可愛い所だ。


「じゃあ今日は月一最中デーだから混むと思うけど頑張るよ〜」


「はい〜!」


「うん!」


そうして私達は沢山の最中を売った。


「そろそろ落ち着いたし後は旦那とやるから沙織と栞菜ちゃんは終わりで良いよ!」


毎月第二日曜日は最中デーと言って半額で売るというサービスをしている。

その日はいつも以上に混むので私は数ヶ月前から手伝いをする事になった。

そしていつも早めに上がって沙織ちゃんの部屋でゆっくりするのが私たちの最中デールーティンなのである。


「いや〜今日もお客さんいっぱい来たね〜」


「年々お客さんが増えるからね‥」


「この前なんて桃花ももかちゃんがイソスタにあげてたよね!」


「らしいね、今や10代からも人気の〜なって言われちゃってさ。」


「でも、本当に好きだよ〜?」


「え?」


「だって鈴木最中より美味しい最中食べた事ないもん。」


「最中の話ね。」


「ん?」


「いや、好きって言われたからさ?」


「沙織ちゃんの事も好きに決まってるじゃん〜?」


「それって”ラブ”の方?」


「え??」


その時私の思考は停止した。

というか緊急停止した。


「そのさ、私、今まで友達とかできた事なくてさ、ずっと1人だったの。

確かに、仲良くなった子はいたけどさ次第に私からみんな離れていって、私なんか1人でいた方が良いんだって自分を恨んだ事もあったの。

でも、そんな時に栞菜に出会った。

栞菜は優しいし可愛いし肌もすべすべで‥」


「それって‥」


「うん。私友達としてじゃなくて恋人として栞菜を見てるの、ずっとずっと。」


本当は少しそんな気はしていた。


「私さ、最初は友達で居たいと思ったんだけどさ、好きな人の話してる顔が可愛いくてその顔見たらだんだん嫉妬に変わっていって気が付いたら好きなってた。

私も普通に男の人を好きになると思ってたけど、でもこれも普通の恋なんだ、私にとって。

別に嫌いになったならそれでも良いけどこの気持ち言わなきゃ私おかしくなっちゃいそうで‥」


「ありがとう。」


そう言って私は沙織ちゃんを強く抱きしめた。


「えっ」


「ありがとう。本当は少しそうなんじゃないかなって思ってた。でも私には好きな人が居たし本当は友達でいれればなって思ってた。」


「そうだよ‥ね。」


「でもさ、人生まだまだ先は長いしさ私前向いて走るって決めたの。」


「うん。」


「だから私今はまだ分からないけど沙織ちゃんの事もっと分かりたい。」


あの時の私は少し変だったかもしれない。

でも





あの時は沙織ちゃんを誰にも渡したくないとおもった。


「私も好きだからまずは友達以上‥って事じゃだめかな〜?」


「喜んで!!」


そうして隙を見計らって沙織ちゃんは私にキスをした。


「ちょっと〜」


「私の初めてだよ。」


「わ、私もだよ‥」


私は思ってる以上に沙織ちゃんの事好きなのかもしれない。


いつかこの関係に進展があると良いななんて思ってしまった。


冬の寒さにチョコレートの溶けるような口付けを‥



ー終わりー

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