「新川舞のその後、後編」

あなざーすとーりー1話「新川舞のその後、後編」


会長になった後も入江先輩が構ってくる事が多かった。


「おはよう、新川さん!」


「でた、入江先輩‥」


「でたってなんだよ〜

俺、新川さんに応援してもらったから無事に当選したよ!」


「はいはい、凄いっす凄いっす!」


「本当にありがと。じゃあまた。」


今日の先輩は思ったよりダル絡みしてこなかった。


「ダル絡みしてこないとしてこないでなんかなぁ‥」


「舞ちゃん最近よく入江先輩と話してるよね?」


「美羽ちゃんもその都度、隠れないでよ〜」


ダル絡みしてこないとしてこないでモヤっとする。


.


.


.


放課後、たまたま入江先輩に会った。


「こんにちは。」


「?!?!?し、新川さん??」


なんでそんなに焦ってるんだろうと思った。


「あ、あんたが新川さんね?」


見るからに見た目が怖い先輩達がいた。


「あんた、裕翔の彼女なの?」


「へ?」


思わず変な返事をしてしまった。


「ち、違うんだよ、みんな俺が新川さんに構ってるだけで‥」


「そんな訳ないでしょ!裕翔に次ちょっかいだしたら分かってる??」


「ちょっと!!あんた達何やってるの?」


「え?」


そこには兄貴の彼女、朝比奈先輩が現れた。


「なにがあったか知らないけど、舞ちゃんをいじめたら、分かってるでしょうね?」


流石は朝比奈先輩‥

あまりの圧でみんなは逃げるように居なくなった?


「朝比奈先輩!!ありがとうございます。」


「大丈夫?舞ちゃん?」


流石は兄貴なんて珍しいもん好きなだけあって優しさに惚れてしまいそうになった。


「あの、ありがとうございました。」


「生徒会長じゃない!」


「あの、僕が最近、新川さんにちょっかい出してたせいで彼女達を怒らせてしまったみたいで‥」


「そっか、まあそれは仕方ないよね。

次何かあったらあんたが守ってあげなさいよ?」


「はい!ありがとうございます。」


守るなんて大袈裟だなとも思った。


「じゃ、会長も舞ちゃんもまたね!」


「はい!」


「あの、新川さん。」


「はい‥」


「俺のせいでごめん。」


「気にしないでくださいよ〜

でも、なんか今日元気ないなって思って探してたんでちょうど良かったです。」


「俺を?」


「入江先輩をですよ?」


「そっか、バレてたか‥

今日この後少し時間あるかな?」


「少しなら、良いですよ。」


そうして私達は帰り道2人で帰る事になった。


「お待たせ!」


「大丈夫ですよ!」


「あの、今日はありがとう。」


「何がですか?」


「なんかさ、俺ってよくみんなに合わせたりしちゃうんだよな、てか兄貴だから自分の事よりも下の奴らの言う事優先したり、昔からみんなの思ってる事を優先しててさ、よく周りに心配かけたくないからカラ元気な時とかよくあって

その時に元気ないなんてらしくないじゃんとかよく言われてさ〜いや、俺だって元気ない日ぐらいあるっつーのってよく思ってたんだけどさ、本当はどっかで無理してる俺を見つけて貰いたかったのかなって思ったんだ。」


まあ言ってる事も分からなくもないと思った。

私の周りも兄貴や翼様は無理して笑ったり誤魔化すタイプだからである。

一個上の男はそう言う人が多いのかな‥


「でさ、俺なんて普通の人間なのにさ男版朝比奈風夏とか言われたり何でも出来るとか色々言われて勝手にアイドルみたいになっててさ、でもそんな時に新川さんに出会ってさ、」


「え?」


「多分さ、君は知らないと思うけど、初めて話したのって新川さんが入学してすぐなんだよ?」


正直全く覚えてなかった。


「多分、いや絶対覚えてないと思うよ。

ちょうど悩んでる頃みんなが俺の事なんか忘れちゃえって思ってたんだよ。

そしたら期待も何も感じなくていいのにとかわがままな悩みを抱えてたんだけどさ、その時新川さんに出会って、ボーッとしてた俺が生徒手帳落としてさ、それをわざわざ拾って渡してくれたんだよね。

でも、それだけだった。

他の人って自慢じゃないけどもっと俺と仲良くなりたいって感じ出すんだよね。

でもそれがなくてさ〜」


流石だ、私よ。

この世の中を翼様がそれ以外かって思ってただけある。


「でもそれが嬉しくてさ、逆に俺に何も思わない人ってのが嬉しかったんだ。

初めて人の事気になったよ、でもその後話しかける勇気がなくてさ〜

生徒会選挙って事で新川さんに話しかけた。

だから嬉しかったよ、こうやって仲良くなれて。

でも。」


「でも?」


「君に好きな人も居るの知ってるんだ。」


「え!?!?本当ですか?」


「うん。俺がいつも君を目で追ってて君は他の人を目で追ってるの知ってたし。」


この人やっぱり私の事本当に見てたんだなって思った。


「まあ逆に言えば新川さんと付き合いたいとかそう言うのじゃなくてさ、仲良くなってこうやって話せる日が来る事を望んでたんだと思う。」


「あの、私‥」


なんて言ってあげれば良いかわからなかった。


「何も言わなくていいよ。

好きって気持ちを言えてスッキリした。

新川さんが好きな人と結ばれる事を願ってるよ。」


「はい!」


「本当にありがとう。

もう俺から話しかける事はやめるよ。

また迷惑かけるだろうし、でも好きって気持ちは本当だったよ。」


今まで一方的に好意を向けて届かないと思いながらも想い続ける事の大変さを知ってるからこそ返事に困った。


でも‥


「そ、そそそ、そこまで言うなら友達になってあげても‥いいよ?」


気がついたら言葉になっていた。


「ほんと?」


「はい!」


「ありがとう!!新川さん!!」


本当に嬉しそうにする入江先輩を見て私も少し嬉しくなった。


.


.


.



そして、時は流れて卒業式も終わった少し後、本当は少し翼様に彼女が出来て落ち込んでいた。


「おはよ!舞ちゃん!」


あの日以降偉そうに舞ちゃんと呼んでくる入江先輩。


「おはよ〜ございます。」


「卒業式、ちょっと前から元気ないでしょ?」


「え?」


私は確かに翼様に彼女が出来てそりゃあ少しは凹んだけど別に誰かにその変化に気づかれるような事は無かった。


「まあ、あんま無理すんなよ?

なんかあったらいつでも俺に言ってくれよ?」


「はいはい、生徒会長に相談しますね〜」


「いや、生徒会長じゃなくて入江裕翔にって事だよ。」


「え‥」


絶対に絶対言わないけど少しキュンとした。

私は昔から白馬に乗った王子様が来てくれると思ってた。

それは今でも思ってる。


でもこの奇妙な関係はきっとまだまだ続くのだろう。


ー終わりー

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