第三章の2

 たった一週間とはいえ、祐希と過ごした時間の密度が濃かったのだろう。祐希がいなくなってから、メンバーの表情には少し寂しさが浮かび心なしか全員の足が地についていない。子供一人とはいえ、仲良くなった者がいなくなるというのはやはり寂しいものだ。何となく気が抜けたというか、今ひとつ充実感がないというか、なんとも言い表し難い気分なのだ。しかし、毎日の生活は維持していかなくてはならない。

 

 はてさて、どうしたものか…。


「祐希君を見ていたら子供が欲しくなっちゃったね」


 亜美のその一言が、みんなの心に火をつけた。


「じゃあ、みんなで子供をつくろうか?」

「みんなで…?」

「そう、みんなで。僕らは具合の良いことに男女三人ずつだろ。つまり一対一ではなく三対三の夫婦関係みたいな感じじゃないですか」

「て、三組の夫婦ではなく、三人一組の夫と三人一組の妻といえば良いのかな?」

「そうです。そして子供ができたら六人の子供。いずれ僕たちはこの世を去るときが来ます。その時にこの地と意識を繋げてくれる子供が居れば、ここの営みは永遠に繋がっていく。それにもし、祐希がこのメンバーに名を連ねたとしても、近い世代の者が居なければ、心苦しくなってしまうと思うんです。だから、みんなで協力して子供を授かってはどうかなって思ったんだけど…。おかしいですかね。」

「良いんじゃないかしら。古代の人達は、子孫を残すために営みをしていたって以前なにかの本で読んだことあるし、別に夫婦になることにこだわらなくても、順繰りに営みをするということならば、逆に束縛もないし良いかもしれないわね」


 和樹の提案に、美里が賛意を示したが、後の四人の考えはどうなのだろうか。男性陣は直ぐに「俺は構わないよ」と賛意を示したが、女性陣は少し抵抗があるようだ。たとえ、普段の生活では心が通じていると言っても、夜の営みを順繰りにとはいえ三人受け入れるのは気持ち的に難しいのかもしれない。


「まあ、直ぐという訳ではないから、考えてみて下さい。また、もし僕の意見より良い方法があれば、提案して下さい。」


 和樹はそう言って、小屋の外に出た。二、三日して夜寝ていると和樹の心の中に美里の声がした。


「和樹さん、女性陣の考えは大方賛成みたいよ。ただ最初に寝る人が誰なのかという部分に、拘りがあるみたいね」

「そうかぁ、そういう事情があるのか、女性は難しいね。それに比べると男っていうのは単純だよなぁ。」

「そんなことはないわ。女性には女性の、男性には男性の魅力があると思うの。個人でもそうなのよね。でも今回の和樹さんの提案はある意味素晴らしいことだと思うの、だってお互いに普通の夫婦の三倍の魅力を手に入れられるんだから。」

「そうだね。それが極当たり前のこととしてみんなに受け入れてもらえれば、素晴らしいことだと僕も思うんだ」


 二人は里の将来のことを思い浮かべながら、静かに眠りについていった。


                                 完



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自然の鼓動~精霊と共に 万里小路 頼光 @madenokouji

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