第11話薬草採取へ
「聖女さーん。ポーションを五個ちょうだい」
「私はハイポーションを二つ」
「はーい、少々お待ちください」
成人の儀式後、私の薬屋の売り上げは非常に上がった。
好調の理由はシャルロットが成人の儀式で戦った魔獣王の子供との戦闘で、私のポーションに助けられたと話してくれたからだ。
今まで領民からの支持が少なかったシャルロットだが、成人の儀式で良い結果を出したことで、領民からの信頼を得ることができたようだ。
そのシャルロットと私の関係は、
「早く仕事を終わらせなさいよスフレ。何時まで私を待たせるつもりかしら?」
「まあまあシャルちゃん、スフレちゃんも頑張ってるぜ」
私の店に遊びにくるくらい仲良くなった。私のあげたポーションが成人の儀式で凄く役立ったのが好印象を与えたみたい。ふっふっふっ、私の薬の力は人間関係も治してしまうのよ。
えっ、その人間関係で失敗して王国を追放されたんだろって? あれは嵌められたんだからノーカンよ!
ちなみに本日のシャルロットはオランジェット様と一緒にやってきて、今は裏でお茶を飲んでいる。
店を閉めた後、一緒に薬草採取に行く約束をしているんだけど、ちょっとくらい手伝ってくれてもいいと思うのだけれど……。
「ほらほらっ、恨めしそうにこっちを見たって私は手伝いませんわよ。キリキリ働きなさいな」
シャルロットは一生懸命働く私にヤジを飛ばしながらケラケラと笑っている。
こいつー、さては成人の儀式の最後で私にからかわれたことを根に持ってやがるな。
「いやー、スフレさんが魔族領にきてからシャルロット様が明るくなられた。私らじゃあ身分が違いすぎてな……」
「いえいえ、私は何もしていませんよ」
「シャルロット様は良い方と友人になられた。私らじゃあ身分が違いすぎてな」
買い物にきていた魔族領の住民から声をかけられた。
シャルロットは住民から信頼されてないって聞いてたけど、この様子だと案外そんなことはなかったのかもね。
信頼されてなかったというよりは心配されてたって感じかな?
夕方お客様が引いたタイミングで店を閉めた私は、シャルロットとオランジェット様と三人で外出する。
魔族領にある沢に薬の材料を採取に行く予定なのだ。
沢の名前はイバラキの沢。水辺には普段採取に行く森では取れない薬草や茸があるって話をしたら、あの辺りは危険な魔物が生息しているらしく、危ないからついてきてくれることになったのだ。
「やっと出発ね。さあ、行きますわよ二人とも!」
「お嬢様、貴方がそれを望むなら」
シャルロットの号令にオランジェット様がキザったらしく答えた。
ひゃーっ! イケメンがかっこつけると凄いオーラが出るわね。初心な町娘が見たら一瞬で恋に落ちそうだわ。
魔貴族と妹様にボディーガードについてもらうなんて申し訳ないな。なんて思ってたけど、二人とも乗り気みたいだし、まあいいか。
因みにブールドネージュ様は外せない用事があるからこれないそうだ。残念。
「ところでイバラキの沢で危険な魔物ってどんなのがいるの?」
「そうですわね。まずイバラキの沢を支配しているのは河童族って魔族なんですが、彼らは友好的な種族です。建築が得意で、魔族領の建物はほとんど河童が建てた物なのですわ」
河童族か、シャルロットやブールドネージュ様の鬼族もそうだけど、魔族領にきてから王国のお伽噺に登場するような種族がどんどん出てくるな。
どんな人たちなんだろう。会うのが楽しみだな。
「問題は水辺に生息する魚の魔物ですわ。奴らは森の魔獣と同じくらい戦闘力が高いのです」
「補足すると森に魔獣王がいるように、イバラキの沢にも沢の主と言われる水竜がいるんだ。森の魔獣王とどっちが強いかはわからんが、奴の縄張りには近づかんように案内するから安心しな」
「ありがとうございます。新しい薬ができたらプレゼントしますね」
イバラキの沢の魔物が恐くても、この二人がいれば安心できる。
こうして私はシャルロットとオランジェット様に護衛してもらい、イバラキの沢に薬草採取に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます