第5話道を極めし乙女

鳥のさえずりが聴こえ始め辺りが明るくなり始めた。


優が寝返りをうつと人の気配を感じる。


ちゅっ


頬に暖かく柔らかい感触があり微睡みながらも目を開けると、


うぐぅあっ、なっなっなんですか?


優、おはよう♥️私を覚えているかしら?


そう言うとコートを脱いで布団をめくり中に入ってきた。


えぇっと、初対面じゃないかと。


優は冷たいわね。身体はこんなに暖かいのに♥️


女性は優に抱きつきそっと頭を撫でる。

ほのかな香りが優の鼻腔をくすぐる。


いい匂い、母さんとはまたちがった感じがしますね。お姉さんは母さんのお友達ですか?


えぇ、お友達だし戦友ね。

本当はもっと早く優に逢いたかった、立て続けに手術が入ってそれ処ではなかったけれど。

のぞみからLINEが来ていて休憩の時に観たの。

一瞬何かのいたずらかと思ったのよ?

写真を拡大した時にこれは優ね♥️って感じたからすぐに返信、上司に嘘の報告をして着替えて。

そして今は優のそばにいるわ、ふふふっ。


お姉さん、お名前は?


まきよ。はなよ、優のお母さんとは同級生でね。

優のお母さんはね、とっても繊細な人だったわ。

初めてお母さんと話した時だって…


次の言葉を言おうとしたその時、


ココン、優?起きてるの?開けるわよ?


そう言ってのぞみが部屋に入ってきた。


まきぃ~、抜け駆けは許さないわよぉ。


そう言ってのぞみが反対の方から布団に侵入してくる。


のぞみ。どの口がそれをいうのかしら?

私達の優を独り占めにしようなんて、ねぇ優♥️


シングルベッドに女性がふたり、間にいる優はたまったもんじゃない。


ちょっと!それはこっちのセリフ!

さっき、ちょっとトイレ貸してちょうだい。って言ったきりなかなか戻ってこないから体調でも悪いのかと思っていたら…

案の定優の処にきていた、しかも添い寝しながら会話して!


いいんじゃない?ふふふっ、優は可愛いんだから♥️


それは私も同感よ?こんなに可愛い男の子はどこを探してもいないからね。

だけど…


あっあの!苦しいのでベッドから出たいんてすけどぉ。


優がそう言うと、


あっ、ごめんね優。のぞみが布団に入ってきたから狭くなったのよね。


そう言うとまきがベッドから出る。

夜明けの光がまきの全身を浮かび上がらせる。


のぞみさんといい、まきさんといい、母さんとは違うタイプの女性でなんか…その…大きい。


そんな事を考えているとまきの隣にのぞみが立ちこちらを伺っている。


さぁ、私達の優?朝よ、起きなさい♥️


そうのぞみが手をさしのべる。


はい、おはようございます。

のぞみ、まき。


はいっ、おはよう♥️


のぞみが優を抱き締める、顔がちょうどのぞみの胸にあたるので柔らかい感触が優に伝わる。


のぞみさんもいい匂い。

落ち着くのは香水のせいかな。


抱き締められた優は力が抜けそうだったが懸命に踏ん張っていた。


机の上の時計は5:59、もうすぐアラームが鳴る。

ピピピピッ、ピピピ…

ピンポーン、ピンポーン…


チャイムが鳴る、と、同時にのぞみのポケットから着信音が…


優から離れてのぞみが電話に出る。

うみ、おはよう。さすがね、時間ぴったりよ?

ふふふっ、今優が目覚めたところ…

えぇ、うん、はい、それは支度してあるわ。

それじゃあ、すぐに開ける、わかった、はぁ~い。


そう言うとスマホをしまい、のぞみは部屋を出て

いった。


優?顔を洗って歯磨きね♥️私達もいきましょ?


まきに促されて部屋を出る。

階段を下りていくと、玄関でのぞみが女性と話していた。


優!まぁ本当にはなよにそっくりなのですね!


女性は会話もそこそこに優に近づき前に立つ。

その出で立ちは竹のようにしなやかで品がある。


おはようございます、優。

今日から貴方の先生になるうみと申します。

住み込みで貴方を指導するので宜しくお願いします。


あぁっ、こちらこそ宜しくお願いいたします、うみ先生。


まるで卒業証書授与の様だ。


うみぃ、そんな堅苦しい挨拶はいいわ、さぁ朝食にしましょう。

優は顔と歯を磨いてきなさい。

うみとまきはこちらへ。

先にはなよに逢わないとね♥️


3人の女神達は玄関を後にする。

仏間にいくのだろう。


純情可憐ってあの人のためにある言葉みたいだ。

優がぶつぶつ言いながら洗面所に向かう。


歯を磨いて顔を洗いタオルで拭いていると仏間から女性達の笑い声が聞こえる。


優が仏間に入ろうと障子戸を開けると女神達が一斉に振り向いた。


優もはなよ、お母さんに挨拶して?


のぞみに促されて優が仏壇の前に、ろうそくの火がゆらゆら揺れる。


えっ、これって…


優がそれを見てうみの方を見る。


そう!それははなよの為に取り寄せたものなのですよ。


仏壇の横にお花と一緒に置かれた魚沼産こしひかり五キロ。

御仏前と書かれたその様子を見て3人は笑っていたのだろう。

なんとも変わった光景だから…


姿勢を正し手を合わせる優。


おはよう、母さん、今日もがんばるよ。


本格的に始まる特訓の前に朝食を食べる。

うみ先生の授業ってどんなんだろう?

今日から地獄の日々がくるとは知らずにゆっくりとパンを食べる優であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

YOU got a chance!! ~夜王、優の爆誕。そして頂点へ~ MICHIO'Z BLOOD @michio2-blood

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ