第4話μ's再集結
仏間に足を踏み入れる優。
そこにはなんとも似つかわしい光景があった。
すっすごすぎる。
なんだこれ、本物のアイドルってこんなんなの?
仏壇の周りにはお花がたくさんあり、まるでお花屋さんのようだった。
その両サイドには衣装がずらり。
そしてにっこりと微笑むはなよの写真の隣には色紙が1枚。
真ん中に大きく、優は任せて♥️と書いてあり
8人の想いと名前、サインだろうか。
初めて目にする光景に唖然としていると、のぞみが背後から優の胸を鷲掴みにする。
なっなにするんですか?
なにって?コミュニケーション?ふふふっ。
えぇ~、突然びっくりするからやめてください。
手を離したのぞみが優の背中を優しく押し出す。
優?貴方、今日から毎日はなよにお線香を立てるの、そして手をあわせて経過を報告するのよ?
いいわね!
そう言われて優はゆっくりと仏壇の前に正座する。
母さん、心配かけてごめんなさい。
これから父さんとふたりで、いやっみんなに支えてもらって生きていくから。
優の顔にやっと生気が漲る。
みんなが後押ししてくれる、母さんと仲良しのみんなが。
そう考えていると、うしろからのぞみの声が。
何やら電話をしている様子だ。
うん、まずは成功。優は私達の事をかすかにしか覚えていないみたいだから時間をあわせてここに集合ね?ん~一番難関なのはほのかね、えぇ、あの娘今どこにいるのかさえわからないし。
まぁ説明すればここにきてくれるとは思うけど。
うん、うん、えりちはどうなの?あぁーそうなんだね。もうすぐ最終楽かぁ、えぇ、それが済めばなんとかなりそう?うん、わかった!にこちゃんに伝えて日程決めて貰うようにする。
それじゃあ、あまり無理しないで?えりちはがんばりやさんなんだから、ふふふっ。
はい、それじゃあ。
電話が済むと優の隣に座り静かに線香に火をつけて立てる。
その姿をみた優ももう一度手を合わせる。
ふたりがリビングにくると普段の光景がやけに眩しく感じた。
う~ん。
全身の力を入れて伸びをする優。
これまで引きこもりニートだった優はそこにはいない。
さすがははなよの息子、のぞみは優の背中を見てそう感じていた。
優、貴方が一人前になるまで私が即席の母親って事になるからよろしくね?♥️
戸籍上は私なんだけど、貴方の母親は9人だから!肝に命じておくのよ?良いわね!
少しでも怠けたらまたわしゃわしゃするんだから。
はいっ、よろしくおねがいします。
深々とお辞儀をする優。
夜遅く父親が帰宅し仏間に3人の姿があった。
父とのぞみ、向かいには優が正座している。
ごめんな、優。本当は事前に相談したかったんだけど、皆さんが緊急事態だからって言ってくれて。
はなちゃん、お母さんの友達ののぞみさんに前から相談していてさ、はなちゃんの回忌が終わったら作戦実行するって話になったもんだから。
父さんな、皆さんのファンだったから偶然お花屋さんではなちゃんを見た時に、あぁ神様ありがとう。って思ってはなちゃんに声をかけたんだよ?
そして今、お前がここにいて俺の隣にはのぞみさんがいる。
事情はのぞみさんから聞いていると思うが、これからは9人が優の母親だぞ!
羨ましい限りだ、はははっ。
豪快に笑う父。それを微笑ましく見つめるのぞみ。
よし!明日から頑張るぞぉ!
優が力を込めてひと言言うと
なにが明日から?私、優に言ったよね?今日からって。
にやりと微笑むのぞみ。
のぞみの奥底に闇を感じてぞわぞわっとする優。
まず初めに写真を撮るわ。
服を脱いでそこにかかっている衣装を着なさい!
優の好きな物でいいわ🎵
えぇ~、みんな母さんのでしょ?
そんなの無理だよぉ。
何を言ってるの?今日から特訓なんだから初日はこれだけで勘弁してあげるって言ってるのよ?
わっ、わかりました。それじゃあ、えぇ~とっ、これにします。
ほぉ~ん、それが優は良いんだ♥️さすがははなよの息子、お目が高い♪
優が手にしたその衣装ははなよが初めてセンターでお歌を披露したステージ衣装だった。
それを着る時にね、はなよは最初断ったのよ?
私には荷が重すぎるって。りんちゃんが着たら似合うとか言ってて。
はなよには内緒でサプライズしてみたの。そうしたら、ぱぁっと表情が明るくなってね。うん…
のぞみが涙ぐむ。衣装のひとつひとつに想い出がたくさん詰まっているのだから当然である。
のぞみさん?大丈夫?
優が心配して声をかけると、
のぞみさん?私の事はのぞみって呼び捨てにしなさいよ!それが私達のルールなんだから。
当然他の7人の名前も呼び捨て。
はなよは優のお母さんだから別ね♥️
さぁ早く着替えるのよ、みんなが寝ちゃう前に。
優が服を脱ぎ始める、それをのぞみが受け取り畳む。
ふたりで着替えているのをそっと父親が見ていた、
おぉ~、さすがははなちゃんの生き写し。
当時のままはなちゃんがここにいるみたいだなぁ。
しみじみ言うと、
父さん、あんまりじろじろ見ないで!恥ずかしいからさ。
何いってんだ!家族だろうが。
だって、これってただのコスプレじゃん。
コスプレの何が悪いんだ、優。
令和の時代はな、赤ちゃんからお年寄りまで好きな服を着て撮影なんて普通の事なんだよ!
優?出来たわ、完成よ!
仏壇の横に立ちなさい!
早くLINEしないと。
こうですか?
違う!はなよはもっと可愛く着こなしていたわ!
そんなこと言ったって母さんがここにある衣装を着たの見た事ないし。
もぉ~、じれったいわねぇ。ちょっと待ちなさい!
そう言ってのぞみは折り畳み式の携帯電話を取り出し何やらさがしている様子だ。
あっ、あったわ!これよ?これを見なさい、優。
そう言って差し出したのは若かりし日の母の姿だった。
えぇ~、これが、これが母さんなの?
何て言うか、そのぅ、顔がぼくにそっくりなんだよね。
だから言ってるでしょ?生き写しだって♥️
さぁ、このポーズをとって立つのよ?いいわね!
のぞみに言われて優は覚悟を決めた。
真剣に画像を見て、角度がどうの、表情がどうの、身体が…
ぶつぶつ言うのは癖なのだろうか、目力が鋭い。
わかりました、やってみます。
そう言うと仏壇の横に立ってポージングした。
それよ!それ。もう撮るわ、いくわよぉ~、
はいっ、終わり。ご苦労様、優、着替えて良いわ。
ふぅ~、これで良かったのかぁ?まぁのぞみさんが、あっ、のぞみがそれで良いって言ってるんだからまぁいいか。
のぞみは素早くスマートフォンを操作し送信ボタンを押した。
すると、一斉に7回音がして画面が高速でスクロールする。
その画面を優に見せるのぞみ、その画面にはこう記されていた。
μ's再集結!!♥️と。
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