第2話謎の女性参上!その名は…

変わらない毎日、変わらない風景、足元にはごみが…とにかく凄い。

が、机の周りだけはごみがない。

優は1日の大半をそこで生活しているから。

無気力、無関心。そんな優にも特技があった。

ネット配信でゲームをするのが唯一の楽しみなのだ。

そのゲームをプレイする人達の中でもかなり有名人になっていた。

365日間、ずっとゲームしていれば誰だって強くなる。

ふと画面を見る、フォロワー数10223人。

配信を始める前に少し調べたらどうやらお金が貰えると書いてあった。

広告収入がなんちゃら、時間がなんちゃら。

優の頭では詳しい事が理解出来ない。

流れに沿ってアプリに登録しただけ。

半年過ぎた頃に10000人の大台に乗った。

180日もゲーム三昧、細かな設定にも気を配りゲーム関連のアニメや配信なんかも欠かさずチェックしていたからノートパソコンの周りには紙がたくさんありどれにも落書きのような文字が書かれている。


この女の子、アーマーをつけた時にここに負荷がかかると皮膚が遣られる、もっとベースがしっかりしていないと矛盾が発生するだろう。


何やら研究者の様でもある。


優がプレイしているゲームは世界で有名なゲームで4人1組のパーティーを組んでボスを倒す。割と何処にでもありそうな設定なのたが、絵のクオリティが非常に高く画質が良いモニターでも粗がわからないので女性プレイヤーも多くいるのだ。


世界でプレイしているのは男女比65:35。何せ可愛い女の子が多く存在し、性格が個性的なので所謂推しの存在が見つけ易いのだろうか。


優が好んで使う女の子はゆうと言う名前の娘。


同名だからと言う理由からハンドルネームもゆう。


優がゆうを操作してゆうと言うネームで配信する、何とも紛らわしい。


ゲーム内の音だけを拾って配信をしているので視聴者はハンドルネームゆうの存在を女性と認識しているらしく、男性からはいやらしい内容の文章、女性からはリスペクトの嵐。


そんなコメントには一切感心が無くただ黙々とゲーム配信をする。


とある朝、いつものように廊下にはお盆がおいてあり、2リットルの炭酸飲料と菓子パン、武骨なお握りふたつ、ふたつ折りの紙が乗っていた。


ん?なんだこれ。


いつもはカードに殴り書きで

 おはよう、優。いってきます(笑)

と書いてあるだけなのでそれを見る度に

 父さん、ごめんなさい。

と内心では思っているのだが身体がいう事をきかないのであった。


紙を手に取り見る。


 おはよう、優。突然の報告で申し訳ないが父さん、結婚することにした。

優には相談しないで悪いとは思ったが、このままがいいなんて思わない。

確かに母さんは素敵な女性だったさ、けどあれから1年。仕事に、家事に、忙しくしてて父さんも疲れた。

優は母さんに似て優しいから受け入れられないかもだけどな、父さんも人間でさ(笑)

情けない話、誰かに支えて貰わないと踏ん張れないって言うか。

兎に角、今日午前中にお付き合いしている女性が…


と、読み進めたところでチャイムが鳴る。


ゆう!、ゆう!

まだ寝てるのかしら?

ええぃ、いいや、入っちゃえ♥️


ガチャガチャ音がなり玄関が開く。

と思ったら目の前には綺麗な女性が…


あなたが優ね?


そう言うと腕を掴まれて引きづられる。


ち、ちょっと、いっ痛いから。

なんなんですか?


あっという間に食卓に座らされて目の前に父さんが支度した朝食が置かれた。

正面には綺麗な女性が座り目と目が合う。


はじめましてね?優。

ゆっくりと味わって食べるのよ?ふふっ。


そう言うと女性は2階へ行った。


まだ手にある紙を広げて続きを読む。


…女性がうちにくるからびっくりしないようにな、まぁこれを読んでいる頃には来ちゃうけどちゃんと挨拶するんだぞ?

帰ったら説明するから、それじゃあ。


紙を持ちながら父の書いた文章を噛み締める。


突然なんなんだ?ん~でも綺麗なひとだったよなぁ。一瞬目があっただけなのに何て言うか、引き込まれる?みたいな。

父さん、結構面食いだからなぁ、母さんも美人だったし。


そう小声で呟いていると上から声がした。


ん~もう、これ何年お掃除してないの?これだから男共は!

先に窓を開けて換気ね、あっ雨戸が固いぃ、んがっ、あぁ~、うぅぅん、げっ、いぃぃ、んが、っと開いたっ。

この溝もあとで綺麗にしないとねっと、ん~いい天気ねぇ、風がきもちい~。


さあ、お掃除の時間です!気合いを入れてがんばんべ♥️


なかなかチャーミングである。

優は気になり開け放たれた自室の入口からそっと女性を見ている。

と、女性が振り返り優に向かって、


優!ごみ袋持ってきて!

あと、ご飯ちゃんと食べるのよ?


はい!あのっ紙だけは捨てないで!ゲームの考察とか書いてあるから。


女性が足元の紙を手に取り、


あぁ、これね?わかったわ♥️

食べ物の入れ物とかくずとかそういうのしか捨てないから、まとめて机に置いておくね♥️


そう言うと黙々と片付けを再開する。


わかるのかなぁ?


ぶつぶつ言いながら袋を取りに行き、


はいっ、これ。ごみ袋です!えぇと1枚じゃ足りないですかね?


そうね!袋は束でもってきてくれる?


わかりました。


袋を女性に手渡し、再度袋の束を取りに行く。


はい、これ持ってきました…


優が言い終わる前に女性に抱き締められる。


つらかったわね、優。でも大丈夫よ?これからはわたしがいるんだから。ね?


囁く様に聞こえたその声はまるで女神が微笑みながら語りかけているようだった。


優の目から涙がこぼれる。


良いのよ?思い切り泣きなさい。わたしが全てを受け止めるから、さぁ。


優の叫びが自室の窓を越えて外に出る。


穏やかな日差しの中、ふたりの姿がきらきらと光り幻想的な空気に包まれていった。



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