可愛くない女



「楓って…可愛くないんだよなぁ」


 昔、そう陸が言っていた。



「可愛くないって……顔が?」


「いんや…性格?つーか、愛嬌がない」


「………そうかなぁ?」



 ・


 ・


 ・

 ・



 初めて楓を見つけた入学式の日。

 "すげぇ、タイプ!" と、一目見てそう思った。


 そこからは…

 なんとかしてヤれねぇかなー。

 なんて、ずっとダル絡みして…


 そしたら陸に言われた。


「湊がよく絡んでる子、紹介してよ」


「…いいよ」


 断る理由などなかった。


 だって、彼女いるしね。俺。


 けど、なんかこのまま陸に渡すのは惜しくなって

 気付いたらキスをしていた。



 それでキスして思った。


 "この子とは上手くいかない" って。



 *



 そこからあれよあれよと話が進み

 楓は陸と付き合い始めた。


 正直面白くない気持ちにはなった。


 だから初めては俺が奪った。


 声を抑えながら俺にしがみつく楓が

 めちゃくちゃ可愛くて…

 楓を抱いた後、2ヶ月くらいは引きずった。


 彼女から「シよ?」と誘われても断ったレベル。



 *



「なに、お前…やっぱ楓のこと好きなの?」


 と、楓じゃない他の女の髪を撫でながら陸が言う。


「あー顔は一番好きかな」


「えっ…紗奈よりも?!」


「紗奈は…別にタイプじゃないよ、俺」


 クズな陸と、クズな俺。


 基本的には女の子であれば誰だって良いけど

 好みくらいある。


 楓は付き合いたい訳じゃないけど

 顔がすげー好みってだけ。


 ただ、それだけなんだ。



 ——————……


 だから…正直うんざりしたよ。


 同じ会社にいるって知った時は。



 ……もう会う予定なんかなかったから。



「…な、んで… ここに——?!」


「いや…俺の台詞だよ」


「………さいっあく」


「…っ、ははっ…!!」


「え?! な、なんですか…?!」


「会いたくなかったのは、お互い一緒か」


 そりゃあ会いたくないよな、お互い。


 だって…

 一番欲しいけど、一番手に入らないものだから。



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