最弱四天王の奔走記

チョモ崎

第1話 決意

 それが始まったのは雷鳴の響くとある雨の日。

「お主のような魔族が四天王とは、魔王様も見る目が無いものよ」

「本当、何故お前と私が同じ四天王なのかが理解できないわ」

「ええ、姉様。これと同じ位に就くなら死んだほうがマシですわ」


 四天王のみなが、突然私にそのような言葉を吐き始めた。

 当然だが私にそれを言われる覚えは、、、ある。

 四天王最弱。しかも魔物の貴族、俗に言う魔族でありながら魔法もろくに使えないと来た。

 蔑まれるのも無理はない。だからと言って虐めていいという言い訳にもならない。

 私は確かに弱い。だが頭脳だけは、軍略や政治などにおいては誰にも負けないと自負してきた。

 それを無視し、私の”魔法が使えない”という特徴や”四天王最弱”という情報だけを見て判断し、それで暴言を吐かれるのは不快だ。

「私はこれでも軍略で魔王様の役に立ってきました。魔王様からも役に立っていると言われたことだってあります。その実績を無視するのは如何いかがなものかと」


「だが魔王様が本当にそう思っているとは言えないだろう?」

「魔王様は口ではそう言っても本心ではそう思っていないに決まっているわ!」

「ええ、姉様の言う通りです。魔王様がお前をよく思っているはずがございません」


 全くもって反吐が出る。魔王様の心を知り得ることは誰にもできないというのに。

 ここまで愚かな者たちでも、強さだけ見れば四天王と呼ぶに足りえるのが実に腹立たしい。

 だがそこで反論してもこの馬鹿どもの態度や暴言が更に悪化するだけであり、良い策とは言えない。

 だが黙って耐えているのも癪である。何か報復出来る事は無いかと思い、そこで私は考えついた。

(誰にもできないような偉業を成し遂げてしまえば彼奴きゃつらは私に何も言えなくなるのでは?)と。

誰にもできないような偉業。単純だが何をすればいいのか難しい話だ。

 だが私は一つだけ知っている。あの魔王様をもってしても不可能だと言わしめたことを。

〔人間との和解〕

 この一見とても簡単そうなもの。だが先代魔王によって人間との巨大な軋轢が出来てしまっている今、天地がひっくり返ってもできる訳がないと思われているこれを成し遂げてやろうではないか。

 やる事は決まった。ならば後は準備をするのみ。

 この馬鹿どもを驚かせる日が楽しみだ・・・

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最弱四天王の奔走記 チョモ崎 @chomo_zaki

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