毎日が日曜日

1/2初恋、あるいは最後の春休みの

毎日が日曜日

 神は言われた。「きっと毎日が日曜日♪」と。こうして毎日が日曜日になった。神は毎日が日曜日になったのを見て、ヨッシャァァァァアアアアと叫んだ。生活リズムが整い健康にもなった。プリキュアと仮面ライダーが毎朝放送されるようになったからだ。しかし、その裏で、TOKIOは村から帰れなくなったし、有吉弘行は毎晩ラジオに追われ、レギュラー番組を何本か降りたし、笑点はネタが尽きてコウメ太夫ばりのナンセンス大喜利番組になった。

 生まれた曜日で名前を決めるミャンマー人に関しては、みんなア行の音であるအかဥで頭文字を始めるようになった。そのせいで私は、バイト先のミャンマー人留学生たちの名前を呼ぶとき、かなりややこしい思いをすることになった。しかし、そんなことは些細な問題だった。日曜日にフルタイムでシフトを入れていた私にとっては。おかげで私の生活から安息日は失われた。

 おはようからおやすみまで毎日毎日仕事仕事仕事で、何のために生きているのか分からなくなった私は、このままだといつかぶっ倒れて、異世界に転生してしまうと悟り、N度目かの日曜日ついに「こんなバイトもうやめてやる!」と店長に三行半を突きつけた。それを傍で見ていたアウンさんとアウンさんとアウンさんも相当不満が溜まっていたのか、私に拍手喝采を送ってくれた。私は孤独じゃなかったんだ。嬉しさのあまり泣いた。ありがとう、ありがとう、ありがとう。ビルマ語で言うならကျေးဇူးတင်ပါသည်、ကျေးဇူးတင်ပါသည်、ကျေးဇူးတင်ပါသည်。

 二度と同じ轍は踏むまいと、次のバイトのシフトは慎重に組もうと思ったが、そもそも曜日はひとつしかない≒曜日感覚は崩壊していたため、定期的な休みも消滅。またか!結局毎日働くハメになった。

 その不幸は私だけでなく、全ての労働者へ平等に降り注ぐのだった。つまるところ、世の中はブラック化した。過労死も加速度的に増えた。段々と働き詰めて死ぬことの何が悪いのか分からなくなっていった。なんならどれだけ早く死へ向かえるかがステータスとなった。かつての不幸は幸福の条件へと、価値観は大きく転換した。目の下を真っ黒に染めるクマや骸骨のように痩けた頬が美人の基準となった。気づけば私の口癖も「寝てない」になっていた……

……

…………

………………

 ヤバい!十四時間も寝てしまった!みんな寝てないのに!という焦りは久しぶりに眠ってみれば意外と無かった。どれだけ強がっても、身体は睡眠を求めていたようだ。爆睡してようやく目が覚めた。これが世の中が忘れた「完璧な日曜日」なんだと。ただ無為に過ごす。次の日曜日、私は仕事を辞めた。その先のことは考えなかった。だってこれからは毎日が「完璧な日曜日」なのだから。

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