「早く魔術を使って起きて」

　そう言いながらアオイの体を更に強く押す。少し苦しくなってきたのか、アオイがケホッと一つ咳をした

「退いてくれたら、すぐ起きます！」

「それじゃあ、つまんないでしょ？魔術の練習と思ってほら早く」

　ジタバタ動くアオイを押さえていると、二人の間に一冊の本が現れ、アオイの顔に勢いよく落ちた

「痛い……」

　顔を押さえ、しょんぼりとするアオイ。顔に当たった本がテーブルに落ちて、ノエルがアオイの体を押さえていた手を離した

「お昼に変えちゃったね。メアさん達が驚くかも」

　と、テーブルから降りながらふと窓を見たノエルが少し困った顔をしつつ呟く。アオイも体を起こしテーブルに座りつつ、いつの間にか明るくなっていた窓を見た

「外の様子を見てくるから。休憩してて」

　そう言うと、家から出ていったノエル。バタンと玄関の扉が閉まる音が聞こえると、アオイがはぁ。とため息をついた

「魔術でって言われても……」

　そう呟いていると、ふと顔に当たり落ちた本が手に触れて、手に取り適当にパラパラとページをめくると、さっきまでは理解出来なかった魔術が読めて本を食い入るように見入る

「この魔術はわかりそう！」

　テンション高くそう言うと、テーブルから降りて、ソファーの側にある本を探りはじめた。テーブルで取った本のページを指でなぞり、魔術を確認していると、床に落ちていた本達がアオイの周りに集まりはじめた

「困っているというか、戸惑ってるね」

　その頃、屋根の上でメア達の様子を見ていたノエルが一人呟き、空を見上げていた。魔術で消した見えなくした家の周りをウロウロと動き戸惑うメア達を見て、うーんと背伸びをした

「さすがに今はちゃんとした時間の空に戻さないと……」

　ふぅ。と一息ついて、ポツリと小声で魔術を唱えはじめたノエル。足元には魔方陣が浮かび、ノエルの髪がユラユラと揺れる。その様子に気づいていないメア達は、急に風が強くなり木々が揺れる様子を見ていた

「……なに？」

　魔術を唱えている途中、不穏な雰囲気を感じ足元に魔方陣を残したまま唱えるのを止めたノエル。辺りを見渡しつつメア達を一瞬見ると特に魔術等を使った様子もなく、目を閉じ辺りの雰囲気を感じとるように集中した

「これ、アオイの魔力だ……。なんで？」

　と、不穏な雰囲気の正体に気づいた時、背後から魔術を唱える声が聞こえ、驚きつつ慌てて振り向くと、体が突然倒されその上にアオイがノエルの体を押さえるように乗っかった

「あの時と真逆だね」

　太陽の眩しさで少し目を閉じながらノエルがフフッと笑いながら言う。ノエルの魔方陣の上に重なるようにアオイの魔方陣が二人の足元に現れ、少しふらつきつつアオイが立ち上がった

「はい、そうだと思います。だからこそ、今しかないと思うんです」

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