第43話 窓から外を見上げたら

「どう?読めそう?」

「はい。なんとか前よりかは……」

 ソファーに座り本を睨むように読むアオイにノエルが少し心配そうに声をかける。アオイの足元に散らばっている無数の本と、ふわふわと浮かぶ沢山の本が読まれるのを待つようにソファーの周辺で止まっている

「今すぐ全部確認しなくてもいいよ。私も魔力を使いたくないし」

「ごめんなさい。でも」

 ノエルに返事をしながらページをめくる。読めない魔術があったのか、アオイの周りに浮かぶ数冊の本と共に、椅子に座りのんびりしていたノエルの側に来て本のページに指差した

「この魔術はなんでしょうか?」

 書かれた魔術を見るとノエルも相変わらずよくわからない魔術が書かれており、本を受け取り書かれている魔術を読んでいると、家の外から気配を感じ、受け取った本をパタンと閉じた

「また来たんだ……。もう魔力とか魔術は諦めてほしいけど」

 窓の方を見ながらノエルが呟くと、アオイが窓の方に近づき外を見た。家の外には少し疲れ顔をした部下を数名引き連れ、一人ご機嫌そうに鼻唄を歌うメアが歩いていた。ノエル達を探す様子はなくただ、ウロウロと歩くメア。部下達は近くにあった木にもたれて、疲れを取りはじめた



「あの、これからどうするんですか?」

 窓からメア達の様子を見ながらアオイがノエルに問いかける。本をまた読もうとしていたノエルの手が止まり、アオイの方を向いた

「今、この世界で魔術を使えるのは私達だけだと思います。きっとこれから……」

「アオイは目の前にある魔術の事を考えてて良いから」

「いえ、でも……」

 アオイが話しはじめようとした時、ノエルが持っている本をテーブルに置きコトンと音が鳴り、アオイの側で浮かんでいた本やソファーの周りに落ちていた本達がノエルの側に集まりはじめた


「ちょっと出ようか」

 椅子から立ち上がりながらアオイに声をかける。その内容にアオイが少し驚いた顔をして窓から外を見た

「暗いのが嫌なら、お昼に変えてあげるから。大丈夫」

「でも、外には……」

 アオイが戸惑いつつ外を見ていると、ザワザワと騒がしい声が家の外から聞こえてきて、ノエルが困ったようにフフッと笑う

「ああ、そっか」

 そう言うと、アオイの体が勝手にふわりと浮かんだ。突然、足元が不安定になりジタバタと体を動かしていると、体が勝手にリビングの中心へと移動し、テーブルの上に体がドンッと落ちた

「痛い……」

 体を起こそうとした時、ノエルが動こうとするのを阻止するように、グッと体を強くテーブルに押し、右手に持った本をバタンと強めに閉じると、戸惑うアオイの顔を見て不敵に笑った

「この本の魔術を使うなら、またあの日の様子にしないとね」

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