第36話 飛び立つ合図で

「寝ている方は起きないね」

「そうだねぇ。まだまだ魔術の修行が足りないね」

 ノエルに返事をしながら食べる硬めのお菓子の音がリビングに響く。その音を聴きながらノエルが温かいお茶をコップに注ぎ、ふぅ。と一息つきながらゆっくりとお茶を飲んだ

「アオイは魔力がなくて、不自由はないの?」

「んー、すぐお腹がすく以外は今は特にないよ」

 そう言うと、空っぽになったお菓子の籠をしょんぼりと見つめたアオイ。その様子をノエルが苦笑いで見ていると、窓の外からカタンと音が聞こえ、鳥が一羽、空へと飛び立った


「やっとメアさん達が帰ったみたいだね」

 キッチンからふわふわと飛んでリビングに来た追加のお菓子を食べながらノエルがため息混じりに言うと、アオイも追加のお菓子を食べながらクスクスと笑う

「意外としぶといね。こんなに探しても見つからないなら他を探せばいいのに」

「空を飛ぶ魔術があまり使えないから、遠くには行きたくないんだよ。今、魔術以外の移動なんて歩きだろうし」

「ああ、そっか。それは面倒だね」

 また少し硬めのお菓子を食べて、カリッとお菓子の音がリビングに響いた。ノエルは柔らかく甘いお菓子を食べながら窓から見える外を見た

「じゃあ、そろそろ魔術を使えるのはノエルだけ?」

「まあ、そうだろうね。けどもう、魔術を読む記憶が危ういからね。魔力はあっても、一からまた覚えないと……」

 そうノエルが言うと、ソファーに無造作に置かれていた沢山の本がふわりと浮かび側に来た。ついでに寝ている方のアオイが敷き布団代わりにしている本もアオイを落とさないようにゆっくりと側に来た

「今から魔術を覚え直すなら、この本とあの子を使うといいよ。その方が一気に覚えられるからね」

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