第35話 目が覚めたら、心配せずに

 朝、窓から入る日差しにうんざりしながらノエルがティーポットに入れた紅茶をコップに注ぐ。ソファーでスヤスヤと眠るアオイを見ながら一人分用意したお菓子を食べようとした時、突然アオイが飛び起きた

「おはよう。やっと起きたね」

「起きたよ。お腹空いた」

「久しぶりに起きての第一声がそれ?」

 はぁ。と呆れながらも紅茶を飲もうとコップに触れようとした時、コップが手元から離れ、紅茶を溢しつつアオイの方へとユラユラと揺れながら移動しはじめた

「どれくらい寝ていた?」

 コップを手に取りながら聞くと、今度は用意していたお菓子がアオイの方へと独りでに移動しはじめ、ノエルが一息つくのを諦めたように窓を見た

「丸一日。心配で外も出られなかったよ」

「ずっと寝るのは、いつものことだよ。忘れたの?」

「いや、そっちの心配じゃない」

 と、アオイがいるソファーの側にあるテーブルで眠る小さい方のアオイを見ると、スヤスヤと寝息をたてて寝ていた。それを見てクスクスと微笑みながらお菓子を食べた

「後どれくらい眠る予定?」

「さあ、私の魔力とはいえ、今は別の人みたいなものだからね。いつ起きるかな」

 紅茶を飲み干したコップがユラユラと揺れながらノエルの側に移動する。それを受け取りおかわりをいれようとして、ティーポットを手に取った時、少し険しい顔をして窓を見た

「どした?」

「メアさん達がまたこの家と本を探しにきたみたい。昨日も来て、色々探し回って無かったのに」

「へぇ。そうなんだ」

 アオイもノエルが見ている窓を見ながらお菓子を食べた。メア達が来たことに気づいてなかった様子のアオイにノエルが少し戸惑った顔をしている

「私の魔力はほとんどあの子だからね。起きてくれないと魔力はほとんど使えないから、誰かが来ててももう気づかないよ。今も起きてるだけで結構疲れるし」

「アオイから弱気な発言を聞くなんて」

「弱気じゃない。事実なだけ」

 そう言うと、最後のお菓子を食べ終えて、つまらさそうにソファーにゴロンと横になったアオイ。側で眠る小さい方をちらりと見たあと、大きくアクビをした

「魔力が足りないなら補うために、今から何か作るよ」

「いいの?会いに来ているんでしょ?」

「まだ大丈夫そう。メアさん達の魔力が無くなって、私が強くなっているからね」

 そう返事をすると、ガタンと椅子の音を鳴らし立ち上がると、キッチンの方へと歩くノエルの後ろ姿を見て、アオイかその座っていた椅子の方へとゆっくりと歩きだした

「そう、それならお言葉に合わせて沢山ご飯でも作ってもらおうかな」

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