第34話 困ったように微笑みながら
その頃、メア達がいる施設の中では、再びアオイの家から持ってきた本に魔術師達が目を通していた。相変わらず本に書かれた内容が読めず困った様子でページをめくろうとした時、目の前にあったはずの本が突然消えた
「あっ……えっ、なんで?」
「どうしたの?」
「メアさん、持ってきた本が全部消えました……」
戸惑いうろたえる魔術師達を見た後、魔術師達の側にあったテーブルにたくさん置かれていた本や床に書かれた魔方陣の上に置いていたはずの沢山の本が無くなっていた
「残念ね。全く内容を理解せずに戻っていったのね」
はぁ。とため息つきながら呟いた後すぐに楽しそうにクスクスと笑うメア。その姿に魔術師達が少し引いて見ていると、遅れてきた女性魔術師が足取り重く少し疲れた顔をしてやって来た
「遅かったね。どうしたの?」
「魔力が大分無くなってきたみたいで、空を飛ぶのも一苦労になって、余計に疲れちゃった」
「大変だね。お疲れさま」
と、会話をしていると魔方陣の側で一人微笑むメアを見つけ、恐る恐る側にいた魔術師に声をかけた
「なにかあった?」
「うーん、色々ありすぎて、ねぇ」
と、返事に困り魔術師達が顔を見合わせていると、メアが部屋にあった本棚に近づき、まだニコニコと微笑みながら本を数冊取り出した
「メアさん、なんだか楽しそうですね」
「ええ、ただただ新たな魔術を作り監視する日々より刺激的だもの」
恐る恐る聞いてきた魔術師に、メアがそう返事をすると、本を持ったまま部屋を出た。後を追いかけるか悩む魔術師達がまた顔を見合わせていると、施設の何処かからドンッと大きな物音と強い魔力を感じ、慌てて全員部屋を出た
「同じように食べて、眠る人が二人もいるとやっぱりいつもより疲れるな」
メアが部屋を出て数時間後のアオイの家では、ソファーで眠るアオイと、まだテーブルで眠る小さい方のアオイを見てノエルが疲れた様子で一人呟いていた。メア達がまた来るか見るために開けていた窓に近づきカーテンを閉めようと手を伸ばしたノエル。ふと空を見上げると、いつの間にか夜になり月が少し雲に隠れ、月明かりは暗く心地よいそよ風が吹いていた
「まあでも、こんな月夜に久しぶりにアオイの世話をするのも悪くないね」
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