第25話 残された希望
「出ていくと言われても、ここは私の家です。すぐには出ませんし、出る気もないです」
「そう、それは困ったわね……」
メアの話しに語気を強め言い返すノエルに、困った様子も見せず、クスクスと笑うメアの後ろにある寝室の入り口では、見慣れた施設の人達が次々と家の中に入ってきた
「出ていかないと言うのなら、ここにある本や気になるものは貰っていくわね」
ノエルが施設の人達を見ている間に、メアが本棚に並べていた本を次々と取り出し、ノエルが読んでいた本もメアの回りにふわりと浮かんでいた
「あなたの記憶の代わりよ。不安定なあなたの記憶より、とても役に立ちそうね」
「ちょっと、勝手に持って行かすわけには……」
ノエルがそういうと同時に、髪がユラユラと揺れ寝室の雰囲気が重くなった。部屋には入ろうとしていた人達が、雰囲気に飲まれ寝室の入り口で立ち止まった
「待って」
魔術を使おうとしているノエルを止めたメア。その言葉に、少しイラついたノエルの魔力が上がり、アオイを持つ右手が少し熱くなった
「残念だけど、魔術は使わさないわ」
メアがそう言うと、ふわりと浮かんでいた本がノエルの側に移動しはじめた
「全部、大切なものでしょ?」
クスクスと笑って言うメアを睨みつつぎゅっと握っていた右手を少し緩め、手の中にいたアオイが落ちそうになった
「何をしているのかな?」
指の隙間から寝室の中を見ると、大勢の見慣れない人達がいて、驚き声を上げそうになったアオイ。慌てて一緒に小さくなった本を口許に当てて声を殺し、見つからないように部屋の中を見渡した
「それじゃあ、また明日ね」
アオイに気づくことなく、家にあった書物を全部持っていたメア達。最後の人がバタンと玄関の扉を閉める音が聞こえると、アオイがいた右手をゆっくりと開いた
「うわぁ!」
ベッドに落とされたアオイが思わず声を上げた。その声に驚いたノエルが振り向くと、アオイが布団の上で痛そうに顔を歪めお尻を擦っていた
「残ったのはあなたとその本だけか。まだ残っただけ良かったのかも」
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