第24話 包まれた温もりの中

「よし、やっと片付いたかな」

 食器の片付けを終えたアオイ。ふぅ。と一つ深呼吸をして、近くに置いていた本をぎゅっと抱きしめリビングに向かう。キョロキョロとリビングを見渡してノエルの姿を探すが見当たらず、少ししょんぼりしていると、寝室の方からカタッと物音が聞こえた


「……あのう」

「今度はなに?」

 寝室にあった本棚から本を取り、ベッドに横になって読もうとしていたノエルが少し不機嫌そうに返事をすると、アオイが小走りでノエルの隣に来た

「文字は読めるのですが、何の魔術か分からなくて……」

 抱きしめている本を見つめながらアオイが言うと、ノエルがはぁ。とため息ついて本を閉じ体を起こした。その隣に座ったアオイが抱きしめていた本のページを開いて、書かれている文字に指を差した

「えーっと、これは……」

 アオイが読もうとした時、突然ノエルが立ち上がり険しい顔をして、寝室の入り口や窓の方を見始めた

「どうしましたか?」

「隠れて」

 アオイの方に振り向くことなく険しい顔のまま言うと、困った顔でアオイも部屋の中をキョロキョロと見渡しはじめた

「早く。身を隠す術くらいあるでしょ?しょっちゅう突然現れていたんだから」

「いえ、あれは単に動いていただけなので、そういう術は……」

 ノエルに返事しながらあたふたし始めたアオイ。それを見て、ノエルがはぁ。とため息ついて、アオイの頭に右手をポンッと置いた

「えっ、あの……」

 上目遣いでノエルを見ると、目の前が明るくなり、ぎゅっと目を強く閉じた。すぐに明るさが消え恐る恐る目を開けると、さっきよりもノエルがとても大きく見えた

「あの、なにを……」

 部屋の中を見てみると、本棚やノエルが読んでいた本がさっきよりも、とても大きく見えて戸惑うアオイ。そんなアオイにノエルが右手を伸ばした。とても大きく見える手に、またぎゅっと目を閉じると、ノエルが小さくなったアオイを優しく右手で包んだその時、バタバタと騒がしい音が家中から聞こえてきた



「こんにちは。こんな所にいたのね」

 クスクスと笑いながらメアが寝室に入ってきた。突然来たメアを見て、ノエルが不機嫌そうにベッドに座り直した

「今は、こんばんわだと思いますが、どうしてここに来たんですか?」

「あなたのお友達から、連絡がつかないと施設に連絡が来たのよ。それで私達がわざわざ探していたの。そうしたら、ここからとても強い魔力を感じてね。あなたの魔力は、とても強くなっているのね」

 またクスクスと笑うメアを見てノエルが睨み、手の中で話を聞いているアオイがぎゅっと目を閉じ息を潜める。メアがコツコツと足音をたてながら寝室を歩き、本棚から一冊取り出し、ノエルを見て微笑んだ

「ここは興味深い場所ね。これからは私達が管理するから、あなたは出ていってね」

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