第23話 食事の前は少しドタバタと騒がしく
「ねぇその本、テーブルに置いて運んだらどう?邪魔でしょ?」
本を左の脇に挟み、恐る恐るおかずを乗せたトレーを両手に持ち、恐る恐るリビングに運ぼうとしているアオイにノエルが呆れたように声をかけた。その声に驚いてガチャガチャとお皿の音を鳴らしながらアオイが振り向いた
「いえ、私のために残してくれた本なんです。たぶんそうなんです、だから……」
アオイがそう返事をすると、ノエルがはぁ。とため息をつきながら振り向いた拍子に少し落ちそうになっている本を見た
「貰ってもいいとは思うけど、汚さないようにね」
「はいっ!もちろん」
嬉しそうにニコリと微笑みながら返事をして、パタパタとご機嫌そうな足音でおかずを運ぶ。その足音を聞いたノエルがフフッと笑い、他のご飯の準備をしようとした時、リビングの方からバサッと物が落ちる音と、ガシャンと割れる音が聞こえてきた
「ごちそうさまでした」
食後、テーブルに沢山並んだ食器の片付けをするアオイ。先に食べ終えていたノエルが紅茶を飲み、ふぅ。と一息をついた
「あの、色々お話を聞きたいのですが……」
ノエルの側に合ったお皿を取りながらアオイが話しかけた。それを聞いて、紅茶が少し残ったコップをテーブルの上に置いた
「色々お話をしたくても無理なの。もうあまり覚えてないから」
「あっ……ごめんなさい」
ノエルの返事を聞いたアオイが、おかずが少し残ったままの大きなお皿を取りながら謝るとノエルが椅子から立ち上がった
「私、少し休んでくるから。片付けよろしくね」
「はいっ!もちろんです!」
大声で返事をしてアオイが持っていたお皿が揺れてまた落ちそうになった。あたふたとするアオイを見て、ノエルが少し苦笑いをしながらリビングを後にした
「何にも思い出せなかったのに……」
寝室につくなり、はぁ。とまた一つため息をついたノエル。そのまま足取り重く、ベッドに近づくと、倒れるようにベッドに寝転がると、天井を見て両手を向けた
「いつになったら魔術が戻ってくるのさ。本当意地悪だよね」
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