第22話 そっと触れたら

 結局、外で話をしてすぐ家に戻ったアオイが玄関の扉を開け恐る恐る中に入る。家の中からは特に物音が聞こえず、そーっとリビングの中に入ると、ソファーに座り紅茶を飲みながら本を読むノエルがいた

「あれ?帰っていたの?」

「はい。えーと、さっき帰ってきました……」

 リビングの入り口で声をかけることもなく立っていたアオイに気づいてノエルが微笑みながら話しかけ、ソファーから立ち上がった

「あっ、あの……」

「ご飯の用意出来ているから、一緒に食べる?」

 アオイの言葉を遮るようにノエルが問いかけると、それに答えるようにアオイがゆっくりと頷くと、ふとノエルがテーブルに置いた読んでいた本が目に入った

「あれ?この本は……」

「アオイが昔に書いた本だよ。書いた割には全然読んでなかったんだよね。まあ、私も魔術の意味があまり分からないから、読んでなかったけど」

「でも、どうしてここに?」

「さあ。何でだろうね、突然現れたんだよ」

 アオイが前に見つけた本とは別の見慣れぬ本にテーブルに近づきその本をジーッと見つめた

「読んでもいいですか?」

「もちろん。魔術が使えるようになるきっかけになるかもよ」

 ノエルの言葉を聞いて本を手に取った。パラパラと適当にページをめくり手を添えた

「どうしたの?」

 キッチンへ行こうとした時、本を開いたまま動かないアオイに気づいたノエルが声をかけるが、返事はなく、本を持ったまま動かないままのアオイに、が近づいて顔を見ると、手を本に置いたまま目を潤ませているアオイを見て、困ったようにふぅ。と一つため息をついた

「今、話を聞く?それともご飯の後にする?」

「ご飯を食べてからにします……」

 本を抱きしめ涙を流さないように目を拭きながら返事をしたアオイの背中をポンッと軽く叩くと、少し顔を上げたアオイの顔が少し赤くなっていた

「じゃあ、すぐに食べるのなら、お手伝いお願いしようかな。気分転にもなるしね」

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