「わ、わたしは……」

　ノエルの言葉に一歩後退りして、顔を何度も横に振る。その様子をノエルはただ黙って見ている

「たぶん、違います。きっとそうです。たぶん」

　否定するように大声で言うと、くるりと振り向き、走り出したアオイ。バタバタと走り玄関の方へと向かうのに気づいたノエルが慌てたように後を追いかける

「どこ行くの？もう暗くなる時間だから危ないよ」

「大丈夫です！ご飯の時までには帰ってきますから！」

「……聞き覚えのある台詞」

　バタンと勢いよく閉まった玄関の扉の音とアオイの返事の声に、ため息混じりに呟き、ふと窓から外を見ると、魔術ではなく時間通り暗くなった空を見て、また一つため息をついた

「いいねぇ。見たかった世界じゃないけれど、これもこれで悪くないね」

　二人の様子を長く青い髪の女の子がノエルの背後でクスクスと笑っている。ノエルがご飯を作るため、キッチンの方に振り向こうとした時、長く青い髪の女の子がふわりと消えた

「本置いてきた……」

　家から飛び出し、すぐ側にある森の中に入ったアオイ。少し振り向いて、家のキッチンやリビングの明かりがついているのを見て、少しホッと胸を撫で下ろした

「あの……見ていましたか？」

「もちろん。喧嘩なんていいね、仲良しになってくれて嬉しいよ」

「仲良くなれていますか？」

　アオイの言葉に答えるように、ノエルの背後で楽しそうに笑っていた女の子が現れ返事をすると、アオイが少し困ったように女の子の方に向いた

「でも、仲良くなるために、わざわざ来たんでしょう？」

「違います。私は違うと思います。たぶんだけど……」

　そう言いながら少しうつ向いたアオイの髪が背中に添うようにゆっくりと動き、女の子がアオイの髪と自分の髪を手のひらに乗せた

「その青い髪、本当そっくり」

　フフッと笑うその女の子の長い髪とアオイの長く青い髪を重ね、雲に隠れていた月明かりが現れ、二人の髪が見えた。アオイが髪を見ようと顔を少し動かすと、重なっていた二人の髪が離れて女の子の手からはらりと髪が落ちた

「私は眠るから。ご飯が食べれるなら起こしてね」

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