第20話 揺れる思いと青い髪

「やっと会えたと思ったのに……。どうしよう、胸が苦しい……」

 息を切らし、寝室に入ったアオイが大きく息を吸い深呼吸をする。何度か深呼吸をして、気持ちが少し落ち着くと、ベッドに勢いよく倒れた。手探りで

枕を探し、ぎゅっと抱き締めるとまた一つ大きく深呼吸をした

「私の髪、青い髪……」

 抱きしめている枕と腕の間から少し見えた髪を見て呟くと、枕を持ったまま勢いよく体を起こした







「魔力だけ残していても困るんだよね」

 その頃一人残ったノエルはまだ月明かりを放つ満月を見ながら呟いていた

「私はこの魔力も魔術も憎いのに。本当ひどいよ」

 また一つ呟いてボーッと夜空を見ていると、カタンと物音が聞こえてきた。その物音の方に振り向くと、アオイが寝室から出てきてノエルの後ろに立った

「あの……」

 小声で話しかけるアオイ。その声が微かにノエルまで聞こえてきて、目線を少しアオイの方に向けると、目線が合ったアオイが少し目線をそらすように顔をうつ向かせた

「今度はなに?」

「あの、どうして、こんな世界にしたんですか?魔術で変えられたと聞いています。だから……」

 と、アオイが恐る恐る聞きながらちらりとノエルを見た。月明かりで少し影に隠れたノエルの顔が哀しげに見えて胸の前に両手を置きぎゅっとつかんだ

「ねえ。アオイがとっておきの魔術があるって言ってたの。何か知っている?」

「い、いえ。私は……」

「魔術が使えないなんて言わないで」

 返事をしながらうつ向いたアオイに少し言葉強めにノエルが言った。その声と言葉に驚いたアオイが一瞬目を強く閉じた

「あなたからアオイの魔力を感じる。もし、魔術が使えないなら、それは扱い方を知らないだけ。アオイの魔術は特殊で、本なんて使い物にならないから」

 ノエルがそう言いながら、一歩アオイに近づき手を伸ばして頬に触れた。少し冷たい指先に、アオイの赤くなった頬の温もりを感じた

「あなたがとっておきの魔術なら、ちょっと許せないけど。それもアオイらしいから許してあげるけとね」

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