第15話 落ち着かない吐息
「おはよう。勝手に入るよ」
ご飯を食べられてから数十分後、両手いっぱいに食料が入った袋を持ったノエルがやって来た。ガサガサと袋の音を立てリビングに行くと、誰もいない静かなリビングの中を見渡すと、キッチンでお皿を洗うアオイを見つけた
「なにかあった?」
と、声をかけながらノエルもキッチンへと向かうが、返事は来ずボーッとした様子でゆっくりと食器を洗っている。その後ろを通りすぎ、食料の入った袋をアオイがいるそばにあるテーブルに置いた時、やっと気づいたアオイが驚いてお皿を一枚、ガシャンと床に落とした
「いっ、いつからいたんですか?」
「ついさっき。それで、私が帰ってからなにもなかったの?」
「はいっ、なにもなかったです!」
「そう。なら良かった」
落として割れてしまったお皿の欠片をノエルが一つ拾うと、他にも落ちていた欠片がノエルの側にカチャカチャと音をながら集まった。ノエルが持っていた欠片を手のひらに乗せると、他の欠片が手のひらに集まりだしあっという間に元のお皿の形に戻った
「今日は来ても大丈夫なのですか?」
「まあね。学校も暇潰しに行っているだけだから」
綺麗に戻ったお皿をアオイに返しながら返事をして、テーブルに置いていた袋から食材を次々取り出しはじめた
「ご飯いる?朝御飯食べていないから、ついでに作るけど」
「いります!食べます」
全部食べられ、お腹が空いていたアオイが大声で返事をした。その声にノエルが少し驚いて、アオイを見るように振り向くと、目線が合って慌ててガチャガチャと食器の音を鳴らしながら再び洗いはじめた。それを見てノエルもまた袋から食材を取り出しはじめた時、突然アオイの髪の毛が少しふわりと揺れた
「私の分のご飯も残しておいてね」
ノエルとは違う耳元から聞こえてきたフフッと笑う声に、驚いてコップを落としそうになった
「どうしたの?」
「いえ、なんでもありません!」
ノエルの問いかけに何度も首を横に振り答えると、ノエルが少し首をかしげつつもキッチンから出て、リビングの方へと向かっていった。ノエルのパタパタと歩く足音を聞きながら、アオイが少し石鹸の泡が付いた手を胸に当て、ふぅ。と深呼吸をした
「ドキドキするためにここに来たんじゃないのに……困ったなぁ。でもまぁ、なんとかなるよね」
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