第16話 姿が消えても
「えっ、もう帰るのですか?もっと居てくれてもいいのに」
朝ご飯を食べはじめてすぐ帰る準備をしはじめてノエルに、アオイが寂しげに声をかけた
「これ以上、ここにいる記憶が残ると色々面倒だから一旦帰るよ」
ソファーに置いていた鞄を取り答えると、アオイがしょんぼりとうつ向いてご飯を頬張っていた
「ちゃんと夕御飯を作りに来るから」
「いえ、その心配をしているわけじゃ……」
ノエルの言葉に否定していると、ノエルがクスッと笑いながらアオイの顔を指差した。その指を指された方に手を置くと、おかずが頬についていているのに気づいて、一瞬で顔が赤くなった
「じゃあまた後でね」
アオイの反応を見て、またクスッと笑いながら手を振り家を出たノエル。バタンと玄関の扉が閉まる音が聞こえた瞬間、アオイの前に置かれていたおかずのお皿がふわふわと浮かんだ
「やっと帰った。やっと食べれるよ」
アオイの向かい側にいつの間にか座っていた青く長い髪の女の子が、浮かんだお皿を取り、大きく口を開け頬張っていた。アオイが突然現れたことに驚いている間に、あっという間に用意されていたおかずが無くなっていく
「本にいてもお腹が空くんですか?」
「あまり空かないけれど、美味しいからね」
食べる手を止めること無く答えると、アオイは食べるのを止め、両手を胸に当て、ふぅ。と一つ深呼吸をした
「あの、あなたはアオイさんで間違いないんですよね」
恐る恐るアオイが聞くが、頷きも返事もなくただ黙々と食べ続けている
「もし、あなたがそうなら、本当に存在していたんですね。良かったです」
ほっと胸を撫で下ろすように呟く。それを聞いた青い髪の女の子は食べていた手を一瞬止め、少し睨んだ
「もう誰も助けなんかしないから。」
「えっ。いえ、私はまだなにも……」
思ってもいなかった発言を聞いて、慌てて否定するが、はぁ。とため息をついて、椅子から立ち上がった。ふとアオイがテーブルを見ると、たくさんあつまたはずの食事がもうほとんど食べられていた
「今の私はこうやって姿を現すだけで精一杯だから。もし、助けがいるのから他を当たって」
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