第13話 今は安らかな時を

 アオイが紅茶の用意をした後、特に会話もなく戸棚にあったお菓子を全部食べた二人。ソファーに座りパラパラとページをめくり本を読むノエルを、テーブルを挟み、向かい合うように置かれたソファーに座るアオイが両手にコップを持ちながら、ジーッと見つめていると、アオイのお腹がぐぅ。と鳴った

「お腹空いた……」

 お腹を擦りながらアオイが呟くと、ノエルが困ったように笑った

「さっきたくさん食べたのに……。大食いなのも仕方ないか」

「どうして仕方ないの?」

「強い魔術師はよく食べるの。魔力を維持するのも体力いるからね。いつも食べていたし、すぐ眠るし、大変だったよ」

「アオイもよく食べるの?」

「そうだね。いつも何か食べていたよ」

 読んでいた本を本棚に戻しながら答えると、ソファーには戻らずキッチンの方に歩きだした

「キッチン使うよ。適当に何か作ってもいい?」

「う、うん」

 慣れた手付きでキッチンにある調理器具や食材を探し、調理しはじめた

「魔術でご飯を作らないの?」

「余計にお腹がすくから、私は魔術では作らないよ」

「……そっか」

 二人分よりも多く食材を切るノエルをアオイがキッチンの扉から少し隠れるように見る。見入っている間に作り終えた、たくさんのご飯をリビングに二人で運び、アオイが先に一口食べた

「とても美味しいです」

「いつも無言で食べていたから心配していたけど、美味しいなら良かったよ」

 美味しそうに食べるアオイを見て、フフッと笑いながら返事をしたノエルも、ほんの数日前の事を思い出しながらご飯を一口食べた





「いつの間にか夜か……」

 食器を洗いながら、ノエルがキッチンから見えるリビングにある大きな窓から外を見た。カチャカチャも聞こえる食器の洗うとは別に、少し物音が聞こえていた家の中が静かになっていることに気づいて、リビングを見るとアオイの姿が見当たらず家の中を探すと、お腹いっぱいになって眠くなったアオイが寝室でスヤスヤと眠っていた

「本当にそっくりだよね」

「でも、あの日私が確かに……」

 アオイが眠るベッドを通りすぎ、カーテンを閉じるため、寝室にある大きな窓に近づくと、ほんの少し月明かりが入り、また空を見上げた

「今日は曇りか。いつもより眠くなるのも仕方ないね」

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