第12話 久しぶりのお家

「私を待っていたの?」

 少し顔をうつ向いて立っているアオイにノエルがため息混じりに声をかけた。その声に気づいたアオイが少し驚いた顔をして両手を胸の前に置いた

「ここで見つかったら色々面倒だよ」

「ごめんなさい……」

 しょんぼりと謝りまた顔をうつ向いたアオイ。それを見てノエルもまた、はぁ。とため息をついた

「家に送るよ。ついでに色々聞きたいし」

「私のお家分かるの?」

「アオイの家に住んでいるならね」

 アオイに返事をすると、スタスタと歩きはじめたノエルの後を置いていかれないように慌てて追いかける。付いてきているか振り返ることなく歩き続けるノエルは、施設や学校から大分遠く、町からも離れた場所に大きな一軒家が木々に隠れるように立っていた




「ここで合っている?」

 ノエルが一軒家を指差し問いかけると、アオイがゆっくりと頷いた

「入ってもいい?」

「うん、私一人で住んでいるから」

 アオイの返事を聞いて、慣れた様子で家に向かい、木製の扉がギィと音を開け開いた

「綺麗にしてくれているんだ。最近来ていなかったからちょうど良かった」

 広い家の中を迷うことなく進み、リビングに着くと、壁一面にある本棚に近寄り隙間なく並ばれた本に触れた

「片付けは下手だったんだよ。魔術の本なんて、読んだらそのままだったし」

「この家にある魔術の本は、私には難しくて読んでないから……」

 アオイの返事を聞きながら、近くにあった一冊の古い本を本棚から取り出した

「本に記憶を残してないか……残念」

 本棚に背もたれ、パラパラとページをめくりながら呟くノエルをアオイが見とれている。その視線に気づいたノエルがちらりと目線を向けた

「あ、あの。お茶を用意しますね」

 目線が合ったアオイが慌てるようにリビングの隣にあるキッチンへと向かう。ガチャガチャと食器の音をたてながらコップを用意していると、ノエルが手慣れた手付きで戸棚に置いていたお菓子や紅茶を取り出した

「私より慣れてる……」

「勝手に取ってごめんね。この家に住んでたも当然だったから場所を知ってるから」

「いえ。本当は私の家じゃないと思うから……」

 アオイの返事を聞きながら、お菓子の賞味期限を確認をするノエル。紅茶の用意をアオイに任せリビングに戻ると、さっき読んでいた古い本とは別の少し分厚い魔術の本を本棚から取り、ノエルが寝転べそうなほど大きなソファーに勢いよく座ると、様子を見ていたアオイの方に振り向いた

「お話しを少しゆっくりしてから、その方が私の気持ちも落ち着くしね」

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