第271話 終焉(5)
「佐奈ー! いいのかぁ、お前はー? 俺はこんなにも赤の他人嘲笑われて、可笑しな人物だと思われているのだぞー!」と。
「佐奈ー! お前が起きてくれないからー!」、
「そんな俺の様子を見てお前はー! 可哀想とかー! 悪いとかー! 思わないのかー! 俺はお前ー! 佐奈の旦那になるのだぞー!」と。
俺はベッドの上で、ピクリとも反応を見せない佐奈へと叫んだ! 吠えたのだ!
でも俺の熱き想い。佐奈への恋心……。
やはり俺は駄目な男だから、嫁はコイツ、佐奈ではないと駄目みたいだから。俺は更に佐奈へと叫ぶ──。
それも今度は、自身の目からポロポロ……。
そう、俺の周りにはお巡りさん達だけではなく、お医者さんや看護師さん、警備員の人達がいようがお構い無しに。自身の両目から俺は涙をポロポロと流しながら。
「佐奈ー! 許してやるー! やり直そうー! 俺が先ほどからお前ー! 佐奈に言っているじゃないかー! なのに、何故佐奈ー? お前は俺のことを無視して狸寝入りをするんだよー!」と。
「俺のことが嫌いならばー! 何で他人の顔を借りてー! 俺の前に現れるようなことをするんだー! いい加減にしろー! 佐奈ー! 早く目を覚ませー! 覚ましてくれ、お願いだ。頼むよ……」
俺は涙を流しつつも佐奈へと力強く嘆願をした。でも最後にはアイツ、佐奈が反応を示してくれないから。
俺は力尽き、気弱な声音……。小さくアイツ、佐奈へと嘆願すれば、ガクン! と、自身の身体の力が抜け、その場にへたり込んでしまいそうになる。
だからお巡りさんが優しい声音で「もう良いか?」、「気が済んだ?」と尋ねてきた。
「はい」
俺は力無い声音でお巡りさん達へと返事……。
「行こうか」
お巡りさんが優しく告げてくれたから。
俺はコクン! と頷いた。
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