第265話 病室内で(1)

「貴方ー! 冴島さんに何をしているのですかぁっ!」


 まあ、最初はこうだよ。俺と冴子佐奈がいる部屋へと急ぎ足、慌ただしく駆け込んできた看護師さんが。俺と冴子佐奈の様子を見て吐いた荒々しい言葉はね。


「別に……」


 俺のしていること! 冴子佐奈へとしている行為を見て驚愕しながら自身の口を押える人! 空いた口が塞がらない人! そして慌てて反転──。病室の外へと、自身の上半身を出して、ナースステーション、入院受付口の方へと顔の向きと視線を変える人……。


 まあ、色々な行動、行為をしている看護師さん達がいるけれど。俺はそんな看護師さん達の様子を見ても気にすることもなく。自身の口から一言、看護師さん達へと漏らせば。


 冴子佐奈に馬乗り状態の俺は、またコイツ! そう、起きているのに死んだふり。狸寝入りをしている冴子佐奈の、寝間着の首の襟をまた強く握り持ち上げ──。


「起きろ! 佐奈! 起きるんだぁっ!」、


「起きているのは知っているのだぞ! 何、狸寝入りをしているのだ! 佐奈はぁっ! 早く起きろ!」と。


 俺は冴子佐奈の力が入っていない身体……。死人のような軽い身体をまた、看護師さん達が凝視しながら、俺達二人を注目する中で、冴子佐奈の首の襟を上下に振って魅せる。


「いい加減にしろよー! 佐奈ー! お前ー! 早くー! 目を覚ますんだ!」と言った罵声も付け加え。


 その後も冴子佐奈の躯のような身体を勢い良く上下、左右に振る、荒業を看護師さん達に魅せるものだから。



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