第264話 憤怒!【怒り!】(6)

 俺が心から佐奈のことを許せば、冴子が消え。佐奈の奴が目を覚ますのだと。俺は確信しているからね。こんな荒行事に出た! 最初は怒りに任せ! そして最後! 今は! 冴子佐奈への情だよ。


 だってコイツ、佐奈は、自分のために将来を棒に振り、会社を辞めた俺への罪悪感で自殺をした。


 そして本人は死んだと思っているに違いない。でも佐奈は死んでも俺の身の上が心配、気になって仕方がないから。その夜から俺の許へと訪れては様子を窺っていたのだろうと思う。


 でッ、俺を見れば、酒に酔う度に部屋中の物に八つ当たりをしては、自分に罵声を吐くから。佐奈はその様子を見ては、俺の部屋の玄関先で泣くようになり、死んでも死にきれなくなるのと。佐奈自身が、自分が生きているとは知らずに魂だけ浮遊しつつ、俺の部屋の絵に同化して、監視を続けているのだろうと思う。


 そして今日は、自身の魂、霊魂を自分の身体に戻している時だから、佐奈の奴を叩き起こすのならば、今日しかない。ないのだよ!


 でも冴子佐奈の奴が中々目を開け、意識を戻してくれないから。


 バタバタ!


 ドッ、ドドドッ! と。


 病室内の外、廊下から、数人の慌ただしい足音が、こちらへと向かってくるのが、俺の耳へと聞こえる。



 ◇◇◇

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