第263話 憤怒!【怒り!】(5)

 だって冴子佐奈の左の腕、手、薬指には今日も、俺達二人の婚約指輪がちゃんとついているのだ。


 だから俺はこいつの主、夫になる者だから、他人に見られ、気が触れた男だと思われようが構うものか! と思うから。


 俺は冴子佐奈の寝間着の襟を掴んで揺すり。


「おい! 佐奈! 起きろ! 起きるんだ!」と呼び叫ぶ。


 でも俺の言葉、台詞、吠えは、これで終わる訳ではなく。


「お前! もう既に目を覚ましているのは、俺は知っているんだぞ! 何、寝たふり! 死んだふりをしているのだ!」と。


「起きれぇっ! 起きろー!」


 そして「佐奈! お前! 大概にしろよ! 何! 人! 他人の顔を借りて俺の前に現れ、素知らぬ振りして、ゆうゆうと過ごしているのだ!」と、俺は更に叫び、吠えると。


「佐奈ー! ちゃんと自分の身体で俺の前に現れ謝罪をしろー! わかったかぁっ! 佐奈ー! だから今直ぐ目を覚まし、起きて、俺に詫びを入れろー! 許してやるからぁっ!」と。


 俺は最後に冴子佐奈のことをちゃんと許してやるから目を覚ませと叫び、告げた。


 俺自身、やはりコイツ! 冴子佐奈でないとダメだと言うところまで惚れに、惚れているようだから。もう冴子佐奈抜きでは生きてはいけないと本気で俺は思う。


 だから俺は、警察に逮捕される可能性が大だとしても、コイツ! 冴子佐奈の目を覚まさせるために、荒行事に出たのだ。


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