婚約者だった彼女は

第143話 新しい生活が始まる（１）

　カチ、カチ……。

　タッチ！　と。

　スマートフォンの画面をタッチしつつ、陽が暮れ、周りの景色はネオンの輝きや、車のヘッドライトの明かり。

　それに映し出される、映像のように見える歩行する人々や自転車を運転する人達の影が多々行き交う中──。

　俺は広島のアストラムラインの中筋駅付近のコインパーキングに車を停め、あいつ……。

　そう、俺と同じ苗字を持つ山下冴子が仕事を終え、自宅に帰宅──。

　俺にあいつが以前提案をしてきた。

　週末には俺の仕事の手伝いをしながら仲良く一緒にいて、二人の愛を育みたいと、言った提案なのだが。

　それをおこなうためにあいつは、一度自宅へと帰宅──。

　お泊まり用の化粧道具や下着、衣服の替えがいるからと一度帰宅の途につくから。

　俺との待ち合わせの場所は何故か、このアストラムラインの中筋駅にしようと告げてきた。

　俺は冴子の提案を聞き、自身の首を傾げ。

「俺が冴子の家まで迎えにいくよ」と。

　あいつに提案をした。