第142話 俺の住むマンションには(7)

 だから俺は「うわぁあああっ! 助けてくれぇえええっ! 冴子ー! 俺が悪かったよー! 頼むから俺のことを許してくれぇえええっ!」、


「そして食わないでくれぇえええっ!」と。


 俺は超がつくほど、非科学的な言葉を冴子の告げ、嘆願、命乞いしながら。


 俺は運転席の扉に、自身の身体が、ドン! と、鈍い音を立て、当ってしまうぐらいの、微妙な距離感だけれど。


 俺を襲おうとしている冴子から退避──!


 自身の身体を身構え、反るような感じで逃げた。


「……新作、驚いた?」、


「怖かった?」


 そんな俺に冴子はニヤリ! じゃない!


 ケラケラと悪戯っ子のように微笑みつつ、俺に尋ねてきたから。


 俺は冴子に『お前なぁ、いい加減にしろよ!』と。


『俺、死にそうなぐらい驚いただろうが! いい加減にしろ!』と。


 俺は何度も冴子に怒声を吐く訳ではなく。


「こ、腰が抜けた……。冴子、どうしよう?」と。


 俺は冴子に対して、何とも情けない声──。


 そう、気の抜けた声で冴子に、抜けた腰を直すのはどうしたらよい! と尋ねる。


「えぇ~! 嘘~! どうしよう?」、


「ごめんね、ごめんね、新作……。ごめんなさい……」と。


 俺が冴子に尋ねるとこいつは、自身の顔を本当に真っ青にしながら謝罪。


 俺の背、腰に、自身の手を回し触り、謝罪しながら撫で始めるのだ。


 冴子は更にこんな言葉も嘆きながらだ。


「どうしよう~? これから新作には、子作りしてもらわないといけないのに。これで腰が悪くなったらどうしよう!?」


 今度は車内で俺の叫び、絶叫ではなく、冴子の後悔の念の嘆きや叫び──。


 まあ、絶叫が響き渡る。



 ◇◇◇




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