第141話 俺の住むマンションには(6)

「…………」


 それでもダメだ!


 この通りだよ……。


 やはり冴子の様子は可笑しくて戻らない。


 だから俺はやはり女のお化けに。


 そう理由は、何かはわからないけれど。


 俺は祟られている。


 俺はそう思い始めて。


(俺を恨んでいる女性ひと……。頼むから許してくれよ。お願いだ……。堪忍してくれ……)


 俺は別に悪いことをした覚えはないけれど、車の天井を見詰めつつ。


「あああ」と懺悔、祈り。


 その後は御経を唱え始める。



「…………」、


「…………」、


「新作~!?」、


「新作! ここに! ここにいるじゃない~! あんたの生気を食らい! 食い尽くしてぇえええっ! あの世へと連れて行こうとしているお化けがぁあああっ! うちはあんたの精気を全部食らってぇえええっ! あんたの事を必ず~! あの世へと~! 三途の川へと連れて行ってやるのだからぁあああっ! うちが一人であの世へと行くのは寂しいからぁあああっ!」と。


 冴子は急に顔を上げ──!


 乱れたこいつの髪の隙間から、俺のことをギョロリ! と、自身の目を光らせつつ!


「きゃぁ、はははっ!」、


「わっ、ははは」


「ひっ、ひひひ」と気持ち悪く、恐ろしく笑いながら。


 自身の両手をかかげ──!


 俺を襲うかのように、冴子は呻り、吠えてきた。


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