第140話 俺の住むマンションには(5)

 まあ、そんな感じでさ、冴子にも、この辺りに浮遊している霊魂……。


 地縛霊と言う奴が、冴子にとりついたのではないか? と。


 俺は、自身の顔色を変えつつ思う?


 まあ、思い始めたから。


「冴子! 冴子! どうした!?」、


「何が! 何か遭ったのか!?」、


「もしかして身体に異常か? 変なのか?」、


「頼むから返事をしてくれ! してくれよー! 冴子ー! お願い! お願いだぁあああっ!」と。


 俺は更に血相を変え、冴子の華奢な身体を揺すりつつ声をかけたよ。


 俺の心の中で(頼む! 頼むよ!)と願い。


(冴子にお化けがとりついているのならば。頼む! 頼むから、冴子の身体から出ていってくれお願いだ!)とも思い。


 今までで一番強く、冴子の身体を揺する。


 もう、それこそ?


 冴子の髪が、俺の玄関に現れ、泣くお化けの容姿と変わらない暗い髪が乱れるぐらいに。


 こいつの華奢な身体が柳の枝のようにフラフラ揺れようが。


 俺はお構いなしに、冴子の身体を強引! 力強く!


 今にも俺自身が泣きだしそうな勢いで揺する。

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