第128話 新しい彼女の提案(1)

「新作?」


「……ん? 何だ、冴子?」


 泣き疲れて、放心状態でいる俺へと冴子が声をかけてきたから。


 俺は虚ろな目で言葉を返す。


「あのね?」


「うん」と。


 俺が、気が抜けた声でね、頷くと。


「新作は心の病にかかって、重度の女性恐怖症と女性アレルギーがあるじゃない?」


 冴子が俺の心の病のことを尋ねてきた。


「うん、あるけれど。冴子、それがどうかしたのか?」


 だから俺は頷き、首を傾げると。


「こ、これから先、うちと新作は共に歩んでいく訳じゃない」と。


 冴子はここで言葉を詰まらせた。


 そして緊張した様子? とでも言った方がいいのかな?


 そう冴子は、俺の顔色を窺いつつ、自分が勝手に、俺の同意、許可を得た訳でもなく、恋人宣言ならばいいけれど。


 冴子は完全に俺と婚約、結婚を前提にしたお付き合いをしている物言い。


 そう、冴子は今日──。


 映画やドラマ、マンガ、小説のヒロイン達のような押しかけ恋人宣言をしたかと思えば。


 今度は完全な押しかけ女房として俺に、ソワソワと落ち着きなく尋ねてきたよ。


 でも俺は、冴子が自分のことが嫌ではなければ、他人から薄情な奴と指さされようが、佐奈のことは完全に脳裏から忘れ、一からやり直したい気持ちの方が勝っているから。


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