第126話 俺の場合は(30)

 そう、俺は完全に気が触れたような顔をしつつ。


「冴子……。本当に仕方がなかったんだよ、俺がアイツを裏切るのは……。だってさ、自分の妻になる女が、体調が悪いからと会社を早引きしたから。慌てて見舞いにいってだよ。部屋に入ると。俺の物じゃない革靴が丁寧に置いてあって。俺も可笑しい? と思い。部屋に踏み込んだら。自分の嫁になる女が。俺以外の男に騎乗して、淫らに腰を振り、喘ぎ声……鳴きながら甘え、昇天する姿を見て。俺に正気でいろ。許して。許してやってくれ。もう二度としない。させない。監視するから。許してくださいや。今回の出来事は犯罪行為だから許してやってくれと。本人だけではなく。向こうの両親や家の親が言ってきても、許せる訳がないじゃないかぁあああっ! 俺はアイツが泣きながら言っていたことは。今日まで。冴子から話を聞くまでは全部うそだぁあああっ! 俺のことを騙しているだろう! みんなでぇえええっ! と、思っていたんだよ。冴子……」と。


 俺が叫び、気が抜けた。


 そう、また俺は、俯くと。


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