第125話 俺の場合は(29)

 俺は自身の両目から滝のように涙を流しつつ。


「ごめんよ! 佐奈ー! 俺が悪かったよ! 本当に許してくれー! お願いだー!」


 俺は車内で、自身の両目を両手で覆い隠しながら、気が触れたように泣き叫び吠え!


 元婚約者、佐奈へと謝罪する、続ける。


 俺の目の前には元婚約者の佐奈ではなく、冴子がいるのに。


 俺自身も何故だかわからないけれど。


 佐奈ではなく、冴子に。


「ごめん!」、


「許してくれ!」、


「お願いだ!」、


「俺が悪かった!」、


「悪かったよ!」


『許してくれ、お願いだ!」と。


 俺は冴子に対して何度も頭を下げ、謝罪、嘆願……。


 俺、大袈裟に言うけれど命乞いもした。


「佐奈ぁっ! 俺を恨み、殺さないでくれぇ!」と。


 俺は冴子に向けて、何度も頭を下げ、気が済んだかのように顔を上げる。


 まあ、上げたと言っても、俺の顔は完全に生気の抜けた、情けない顔……。


 俺自身の涙や鼻水でグシャグシャになって、血の気のない、放心状態……。

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