第118話 俺の場合は(22)

 だって俺も、冴子の元彼ではないが?


 俺も元婚約者だった佐奈の言い訳に対して一度も耳を傾けない。


 そう素直にアイツの話しを聞き、『うん、うん』と首肯することもしなかった。


 それに佐奈の愚痴も聞いてやることもしなかった男……。


 それも冴子の話しを聞くまでは、俺自身が別に悪いとも思ってはいない、罪悪感もなかったのだが。


 冴子の嘆きや愚痴、不満を聞いてからはこの通りで、辛い、苦しい、悲しいよぉっ!


 何で、あのクソ男!


 俺の元会社の上司──!


 部長に脅迫された時点で、婚約者の俺に相談をしない!


 と、言うか?


 できなかったんだよな……。


 俺に過去の不倫の話しをした上に、写真や動画を見せたら。


 俺に必ず100パーセント捨てられるとわかっているからか言えなかったんだよな……。


 そう、俺さ、先ほどさ、実はね、冴子に対して、安易なことを、にへらと笑いつつ、尋ねてしまって、泣きながら怒られた。


 でッ、その内容と言うのが。


 俺が今、自分自身のことで自戒した通りだよ。


 俺がね、冴子にさ、元部長に脅迫されているのならば。


 何故彼氏に言って相談……。


 二人で警察にいって相談をしなかったのか? と。


 俺は冴子に尋ねた、


 するとさ、こいつは、俺の目の前で、一杯涙を流しながら。

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