第115話 俺の場合は(20)

 そう、今でも俺が目を閉じるとさぁ。


 走馬燈が回るように、あの時の嫌で苦しくなる光景が俺の脳裏に。


 そう、俺の嫁になってくれるはずの女が、他人に跨り、優艶に腰を振り、歓喜しながら鳴いている姿……。


 それを俺は思い出してしまう。


 だから俺は冴子を見詰めながらじゃない。


 俺は空! 空を──!


 走馬燈が回るのを見詰めるかのように、自身の両目の焦点が合わないよう様子……。


 そう、俺自身が完全に、気が触れた人物のように振る舞いつつ。自身の口を開け。


 今度は吠え始める。


「冴子! 俺さ! 直ぐに二人の許へと近寄り。元婚約者の腹部の下に、あの男の物が入り、収まっていようがお構い無しだよ。俺は呆然と開いた口が塞がらないでいるアイツにさ。俺が購入してきたケーキの小さな箱! 店の店員さんが可愛く包装してくれていようが、お構いなしだ! 裸体のアイツへと『このクソがぁ!』とでも吠えたかな? 俺はケーキが入った箱を投げつけてやったよ」、


「するとさ、あの阿保の口……。そう、俺以外の男に馬乗りになり、腰を振り、嬌声を漏らしていた口から。可愛く『キャ~!』とか漏らしてやんのぅ。阿保だから……。でも俺は、自分のことをバカにして、二人で陰で腹を抱え笑い、侮っていた奴等を安易に許す訳はないから。アイツが『きゃ~!』と叫んだ後に。直ぐ自身の身体を庇いながら『ごめんさい』と資材をした瞬間と同時ぐらいに。アイツのことを俺は殴るじゃない。俺はアイツのことを本気で殺すつもりで蹴ってやったよ! だからアイツの身体はまた、『きゃー!』の絶叫と共に一メートルぐらいは吹き飛んだかな?」と。


 俺は、にへらと笑いつつ首を傾げ。


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