第56話 嘆願(2)
だから俺はうん! と頷くことはしないで。
「山下さん?」
「何、お兄さん?」
「赤の他人の俺が、お姉さんと彼氏のこと……。た、多分、その指輪にまつわる悲しい話だろうと思われる、エピソード何かを聞いてもよいのかな? 知らない方がよいと言うこともあるしさ」と。
俺は山下のお姉さまの婚約や結婚……。
彼女がいつものように明るい笑み。
そう、多分?
心に傷を負う俺は、山下のお姉さまの屈託のない笑みに惹かれつつ、自身の傷をさり気なく癒していたのだと思うから?
俺は彼女と彼氏にまつわる話……。
それも彼女が今にも泣きだしそうなぐらいの、闇を抱えた問題の話しだろうと思うから?
俺が山下のお姉さんに対しての、自分なりの神聖化しているイメージが根本的に変わる可能性があるから。
彼女の口から、このまま一生聞きたくはないかなと、俺は思うから。
俺は、にへらと笑いつつ、山下のお姉さまへと拒否してみせたのだが。
「うぅん」と、彼女は首を振り。
「……それでもうちはお兄さんにだけは、ちゃんと話を聞いてもらいたい」と。
彼女はもう既に、女性の弱い部分……。
そう、自身の目尻から涙の露を垂らしつつ、首を振りながら。
何故か、俺に話しを聞いて欲しい、じゃないよね?
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