第54話 問いかけ(3)

(あ、あれ? もしかして俺は、山下さんに聞いてはいけないことを尋ねてしまったのだろうか?)と思い。


(俺はもしかして地雷を踏んでしまったかな?)とも、更に思えば。


 俺は山下さんの様子をジィー! と、見詰め窺う


(……ん? あれ、山下さん……。誰かに似ているな? 一体誰だろう?)


 俺はこんなことを思い。


「う~ん」と呻れば。


「……お兄さんにも居たんだね。婚約指輪をあげるようなひとが?」と。


 山下のお姉さんは、自身の顔を上げながら俺に尋ねてきたから。


「あれ? 山下さんに言わなかったけぇ?」と。


 俺は微笑みつつ、尋ね返す。


「うん、彼女がつい最近まで居て、お互いが合わない者同士だと気がついて別れたとは、うちも教えてもらったけれど。婚約指輪を渡すほど深い仲の女性と別れたとは聞いていないよ」と。


 山下のお姉さまは、にへらと、ここは笑うところだろう? 場面だろう? と言う、この場面で。


 彼女は薄ら笑いすら浮かべず、真剣な顔……。


 と、言うか?


 山下のお姉さまは、今にも泣いてしまうのではないか? と思われる。


 いつものヘラヘラ、ケラケラと御日さま、ヒマワリさまのように笑いつつ。


 俺に何を言われても笑い誤魔化してくれる強い女性ではなく。


 彼女は女性の弱い面をだしながら俺に不満ぽく告げてきた。


 だから俺は、別に悪い者ではないけれど。


 山下のお姉さまに。


「ごめん」、


「すまなかった」と。


 俺は頭を下げ、謝罪をした。



 ◇◇◇



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