第53話 問いかけ(2)

 俺はまだ呆然、唖然としている山下のお姉さまへと笑い誤魔化しながら優しく告げ、尋ねれば。


「山下さん、変なことを尋ねてごめんね」と。


 俺は彼女に謝罪……。


 店内、車内の中から、自身の頭を深々と下げながら謝罪をした。


「……お兄さん、私の左手の薬指にある指輪に気がついていたんだ?」


 山下のお姉さまは、にへらと笑いながら俺に尋ねてきたから。


「うん」と俺は頷き。


「俺、山下さんが今、左手の薬指にはめている婚約指輪によく似たデザインの指輪を。俺も元婚約者にプレゼントしたからね。山下さんには好い男性好いひとがいるんだろうな? と。山下さんのことを俺が、接客した時から思っていたよ」と。


 俺は山下のお姉さまへと優しく笑いと、口調でね、俺は告げた。


「そうなんだ」


「うん」と。


 俺が頷くと、山下のお姉さまは、直ぐに俯き。


「…………」


 彼女は急に沈黙……黙り込んでしまった。


 だから俺は、そんな山下のお姉さまの様子を凝視しながら。

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