第51話 常連のお客様との何気ない日常(6)

 それ以上は、他人の物の感情に踏み込まない。


 いくら彼女が、俺に好意を抱いている可能性があるとしてもだ。


 他人の大事な物に手を出し、摘まみ、攫ってはいけない。


 自分が同じ仕打ちに遭えば、と言うか?


 俺は遭って、自害も考えたぐらい落ち込んだ。


 そう、俺の両親や友人の言う通りだ。


 俺は婚約者を会社の上司に寝取られた、と言うか?


 俺と付き合い、婚約までしていたのにアイツは……。


 本人は否定していた。


 ちゃんと別れていたと、俺に誤魔化し、良い訳をしてきたけれど。


 アイツ! 俺の大事な物だった奴は、会社の上司不倫を続けていたようだ。


 それを偶々、偶然に、アイツの部屋で発見──見てしまったから。


 それが原因なのだろう思う?


 みなの言う通り、俺の重度の女性恐怖症と女性アレルギーはね。


 だから山下のお姉さまの彼氏、婚約者の人にも、俺と同じような悲しく、辛い思いをさせたくはないから。


 いくら彼女が俺に好意がある可能性があるとしても絶対に、それ以上の流域には足を踏み込まないように心がけていた。


 でも今日の俺は何故か?


 と、言うか?


 他人に婚約者を寝取られた苦い経験を持つ俺が何故か?


 これ以上踏み込んではいけない、彼女の領内、プライベートへと侵入して、を尋ねてしまう。



 ◇◇◇




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