第45話 常連のお客様からの色々な問いかけ(8)

「いや、お兄さん。うちが尋ねているのは、若い女性の、そう言ったお店ではなく。マダムの女性ばかりのお店……。そう言うお店もあるのでしょう、お兄さん? だから家はお兄さんが、そう言ったお店に通っているんじゃないのと尋ねているの?」と。


 ああ言えばこう言うではないけれど。


 本当に彼女は、俺のプライベートの奥底を嬉しそうに探ってくる。


 俺自身も彼女が、何故そんなことをしてくるのか、まではわからない。


 だが彼女は、いつも嬉しそうに俺のことを揶揄しながら尋ねてくる。


 だから俺は時々なのだが。


 この容姿端麗な御姉様が、もしかて、俺に気があるのでは? と、錯覚してしまうことがあるのだと、言うことは。


 俺自身も流石にないから大丈夫だよ。


 だって先ほど俺が説明をした通りで、彼女の華奢な左手の、しなやかな指には。


 もう既に他人の物であることを示す婚約指輪が装着されているから。


 俺自身も冗談でも思わない。


 だって自分の大事なものが他人汚にされつつ。


 知らない男の上で優艶に舞い、鳴く姿を想像しただけでも気持ちが悪いのに。


 実際に、自身の目で見てみろ。


 二度と女性と言うものを信用できなくなるし。


 若い女性の生の裸体姿を見ても、あれが立たなくなること間違いないくらいショック! 嫌だ! 気持ち悪くなる! 二人に対して、憎悪だって募ると思う。


 だから俺は、冗談では思っても、本気では思わない。


 お姉さんの彼氏、婚約者に悪いからね。


 それにさ?


 彼女が俺に必要以上に性のプライベートのことを尋ねてくるのは。


 彼女の婚約者が他所で、自分以外の女性と悪さをしているのではないか? と。


 婚約者の人とも年齢が近い俺の言葉をフムフムと聞き、参考にして、彼女の婚約者に尋ねているのではないか? と。


 俺はいつも思いつつ、自分自身は男性用ヘルス等には通った経験が全くないから。


「いや、御姉さん? 俺は産まれてこの方、そう言ったお店に言ったことが無いから。一人で、そう言ったお店の門をくぐる勇気がないよ」と。


 俺がにへらと笑いながら、御姉さんへと言葉を返せば。


「そうなんだ」と。


 御姉さんは何故かこの時に大変に安堵した顔と、大変に嬉しそうな顔をしながら俺に言葉を返してくれるのだが。


 俺はそんな彼女に対して、いつも素っ気なく。


「うん」と頷くことしかしない。


 これ以上の、男女の込み入った黄色い会話は。


 俺が御姉さんの婚約者の立場でも嫌だからね。


 俺は男女の最低限のマナーだけは、意図的に守るようにしている。



 ◇◇◇



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