第18話 すすり泣く、女性の姿は(3)

 だから松原が、啜り泣きの女の容姿が、自身の瞳に見えると無言で告げられたと同時に。


 俺の顔は大変に緩んだ。


 もう、それこそ?


 後で直樹や秀樹から聞いた話だけれど。


 俺自身、凄いドヤ顔をしていたらしいのだ。


 まあ、しているだけならばよいのだけれど。


 俺はここで大変なミス、失態を犯してしまう。


「ほらぁ、お前等、見てみろ! 俺の言う通りで。俺に恋して泣く、ストーカー女は存在しただろう!」


 俺は高らかな声音で叫んだよ。


「俺はうそつきでもないし。気も触れてはいないだろう!」と。


 俺は今まで自身の胸の内に貯めていた物を吐き出し、鬱憤を晴らすかのように。


 直樹や秀樹、松原……。


 そしてこの場にいない、家の両親達へとケラケラと高笑いをするものだから。


「新作、静かにしろ! 外の女に気づかれ、逃げられてしまうぞ」と。


 俺は松原から注意を受け、諫められると。


「あっ! ごめん!」


 俺は慌てて、自身の口を塞ぐのだが。もう時は既に遅い、と言う奴でね。


 女性のしくしくと泣く声もピタリ! と止み。


 ドッ、ドドド! と足音が俺と松原の耳へと聞こえてきたから。


「女が逃げる!」


「女が逃げたぁ!」


 俺と松原の大きく、荒々しい音と共に。


 ガチャ、ガチャ! と、玄関の扉の鍵が慌てて、ロック解除されれば。


 俺が玄関の扉をガチャリ! と、慌てて開け、外へと飛び出せば。


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