第17話 すすり泣く、女性の姿は(2)

 だから松原は真剣な眼差しで俺のことを見詰めつつ、コクリ! と頷く。


 そして俺の身体を避けつつ、自身の目を覗き穴へとつけ──。


 玄関の外を観察すると。


 あいつ、松原の顔色が急変し、慌てて後ろ。


 俺と直樹、秀樹の方へと視線を変え、松原も。


 自身の口をパクパクと無言で動かしつつ。


 俺達三人へと。


『新作の言う通りで、本当に女が居る! いるよ! 女が!』と。


 松原は興奮気味……。


 でも無言で、『居る! 居る!』と、扉の覗き穴を指さしつつ、俺達三人へと告げてきたから。


 俺がここでついつい調子に乗ったのがいけなかった気がするよ。


 後々のことを考えると?


 俺がさぁ、つい出来心と言うか?


 今まで、俺の両親や友人達……。


 まあ、友人と言うのはこいつら三人のことになるのだけれど。


 俺はつい先ほどまで、心の病に侵されている人間……。


 そう、気がめいり、可笑しくなり、幻影……。


 世に言われる物の怪と言った類の物──。


 お化けと呼ばれる物を、自身の病んだ弱い心の中、脳内で妄想して作り、幻影を見ているだけだから。


 この休日明けに、診療内科へと行き。


 そして通院をしろと。


 俺は両親だけではなく、直樹や秀樹、松原にも心療内科通いを勧められていたから。


 俺自身、かなり胸の内に不快感を募らせていたのだ。

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