第16話 すすり泣く、女性の姿は(1)

 スゥ、スゥ、スゥ……。


 俺達四人は足音を立てないようにしながら、抜き足、差し足、忍び足で部屋の玄関へと近寄る。


 今回は、親父やお袋が泊まりにきた時のように足音を立てながら、自身の部屋の玄関へと向かうのでは無く。


 できるだけ足音を立てずに近寄る。


 すると玄関に女の座り込み、嗚咽を漏らす姿は、眼につかないようだから。


 俺をストーカーしている女は、玄関先に居ると言うことになるから。


 俺はゆるりと玄関の扉に近づくと。


 扉の覗き穴から、玄関先の様子、廊下の様子を窺うと。


 やはり居た。


 見えた。


 病院の入院服みたいな寝間着姿の、髪の長い女性の姿が……。


 今日もやはり、玄関先で、体操座りをしつつ、俯きながら啜り泣きをしている容姿が、俺の瞳に映ったから。


 俺は自身の、直ぐ真後ろにいる松原へと首の向きを変え。


 扉の覗き穴を指さし、ジェスチャーしながら無言で。


『覗き穴を覗いてみろよ』と告げる。


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